「闇のバイブル 聖少女の詩」(1969年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ヤロミール・イレシュ監督によるチェコスロバキアのホラー映画。出演はヤロスラバ・シャレロバ、ヘレナ・アニェゾバ。

 

 

<あらすじ>

 

祖母とふたり暮らしの美少女ヴァレリエに、初潮がやってきた。すると、黒装束の男イタチと青年オルリークがやってきてイヤリングを奪った。それはすぐに返されたが、祖母に見つかってしまう。祖母は母の話をしながら、警戒しているように見えた。彼女は何かを隠していた。

 

伝書鳩を使い、オルリークから内密な手紙が届いた。会いたいという。教会で処女を対象とした訓戒があり、その際に会う約束であったが、オルリークは鎖に繋がれていた。ヴァレリエは彼を解放してあげるが、鞭を持った裸の男たちに追われてしまう。

 

黒装束のイタチがヴァレリエの前に現れる。彼はヴァレリエを教会に連れて行き、彼女の祖母の本当の姿を教える。祖母は、牧師の愛人であったが、老齢により捨てられることを怖れていた。そして若返りのために契約を交わしていた。イタチは、イヤリングの中の薬が君を守ると教えてくれる。そして彼女は、オルリークと自分が兄妹だと庭師に聞かされる。

 

好色な庭師は、ヴァレリエを強姦しようと忍び込んできた。彼女はイヤリングの薬を飲んだ。それは仮死になる薬で、ヴァレリエを殺したと思い込んだ庭師は逃げた。今度は、イタチに血を吸われて若返った吸血鬼の姿になった祖母に殺されかかった。助けたのはオルリークであった。オルリークはヴァレリエに求愛するが、彼女は兄妹であることを理由に拒んだ。

 

イタチと祖母は、ともに吸血鬼であり、老齢に苦しんでいた。そこでオルリークとヴァレリエの心臓を使って若返ろうと画策する。その一方、祖母を愛人にしていた牧師のグラツィアンが、ヴァレリエを強姦しようとして失敗した腹いせに彼女を魔女として告発していた。火あぶりになりそうなところ、イヤリングの薬を飲んで仮死になったことで命拾いをした。

 

ヴァレリエはオルリークの下へと向かい、彼の愛を受け入れる。オルリークはイタチを殺害。すると祖母も倒れてしまう。祖母はオルリークとヴァレリエが生まれた顛末や、その後のことなどを話して死んだ。だが死んだのは本当に祖母だったのか。ヴァレリエはオルリークと肉体関係になった森の中の小屋で目を覚ます。

 

<雑感>

 

これはまったく知らなかった作品。映画が公開された1969年当時、世界は冷戦の真っただ中で、核戦争が心配されているようなご時世。東側だったチェコスロバキアの映画の情報などほとんど入ってこなかった。日本で映画評論家の地位が高かったのは、こうした東側の映画にも精通していたからだ。いまはただのデブの集まりで、評論家など何の意味もないが。

 

ゴシック風の映像が美しい本作は、意味がわからないところが多々あり、それほど整った脚本ではない。性と生、回春と強姦など、対比関係にはなく、価値観が似ているものを同時に並べて描いているので、不思議な味わいの作品になっている。

 

意味は求めない方がいい。おそらくだが、同列と対比は意識せずに羅列してあるのだろう。東側諸国は、政府の金で映画を作っており、観客を意識することが少ないので、脚本のチェックが疎かで、映画監督の感性に任されていたのだ。興行収益を意識していないから、映画作りが細分化されていない。脚本も監督なのだろう。

 

☆4.0。ただ、フィルム時代の作品であるのに怖ろしく映像が美しい。