「リトルウィッチアカデミア TVシリーズ」(2017年冬春作品)第1話 感想 | 深層昭和帯

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ぶっちぎりの面白さ。今季はこれで決まりだよな。



ガイナックス時代からそうだが、TRIGGERが面白い作品を作るときは、原点回帰が意識されることが多い。アニメに感動した原初の体験を意識しながら、それをどうやって新しい作品にしていくか模索する中で、こうした作品が生まれるのだろう。逆に奇を衒った作品はことごとくダメだな。ラノベ原作も退屈極まりなかった。

「リトルウィッチアカデミア」を視聴していると、すごく懐かしい感じがするが、下敷きにされた作品があるわけではなく、子供のころ雑多に視聴していたいくつもの作品の、心に引っ掛かった何かが再現されている。何が再現されているのか断言できない、掴めそうで掴めない体験の数々が深層にあって、それはアニメに限らず読書で得たものも含まれるのだろう。子供のころに、創作物にワクワクした経験がない人間は、あらすじや絵柄しか目に入らないはずだ。

絵をしっかりと動かすのも、絵が動いていることに感動した体験の再現だ。自分がいる場所とは違う異世界の創造も、魔法がある世界の描写も、魔法使いにしか利用できない通路の描写も、幼い日の感動の再現で、この作品を楽しめた人は、それなりに良い体験を親から与えてもらっているのだろう。

好き嫌いというのは、選択の積み重なりの結果だから、子供のころに児童文学を読む選択をした子供と、テレビのバラエティー番組を見る選択をした子供とでは、大人になったときの好き嫌いがはっきりと分かれる。好き嫌いは育ちの違いだから、大人になってしまえばその差は決して埋まらない。

この作品は子供のころに良い経験をさせてもらった人が楽しめる作品だから、子供に同じような体験をさせてあげたい人は子供にこれを体験させたいだろう。だが、現状の放送・配信の仕組みでは、数多ある作品のひとつにすぎないから、このアニメを選んで子供に与えるのは困難だろうなとも思う。テレビアニメがそれなりに子供向けを意識して児童文学系の作品も昼の時間帯に流していた当時とでは、状況が全然違う。

次世代の子供は、帰るべき原点が存在しない可能性もあり、可哀想な気もする。ぜひ再放送は昼の時間帯にやってもらいたいものだ。

あらすじだの、作画の良さだのについてはまたおいおい書きたいことがあれば書く。あまり詳しくないので違っているかもしれないが、「リトルウィッチアカデミア」はTRIGGERの若手育成の試みのひとつだったはず。最初は短編で、ネットで資金を募って劇場版が制作され、今回のテレビシリーズに繋がったはずで、だとすれば若手育成が上手くいってる証左であろう。若手は恋愛ものの青春アニメを作りたがるものなのに、子供向け作品を作ったところが特筆すべき点かもしれない。