「ブラック・ジャック」(2004年作品)第45話 感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

原作:手塚治虫、監督:手塚眞、制作:手塚プロダクション。



Karte:44 ピノコ誕生

ピノコの誕生日にブラック・ジャックは初めてピノコが家にやってきた日の事を思い出す。4年前の夜、横倍病院の可仁博士が女性患者を連れてブラック・ジャック邸に現れる。患者の腹部には畸形嚢腫があり、その腫瘍の呪いのため、いつも手術は中止になるという。

ブラック・ジャックは呪いを信じずに腫瘍を取り除く手術を開始するが、患部にメスを近付けると激しいショックに襲われる。ブラック・ジャックは腫瘍に向かって助けると約束した。腫瘍の中には人間の臓器がひとそろいあったため、ブラック・ジャックはそれらを培養液の中に入れた。

手術が終わると患者は喜ぶわけでもなくすぐに帰ると言い出した。医師も患者も。腫瘍から摘出されたものには興味を示さなかった。ブラック・ジャックは臓器に身体を与えて新しい生命を生み出した。そしてピノコと名付けた。

<雑感>

これを読んだときは衝撃でしたよ。まだ子供だったはずだしね。子供心にこの漫画の記憶はずっと焼き付いていたなぁ。記憶の中のピノコ誕生の回はもっとおどろおどろしかったはずだが、手塚はホラー漫画家じゃなかったからいま見ればソフトな表現だったのかもしれない。

ベトナムからベトちゃんドクちゃんという身体が結合した子供が来日して、日本で切り離し手術をやったとき、母親がいろいろ説明してくれたのだが、真っ先に思い出したのがピノコだった。ベトちゃんドクちゃんは、当時米軍が蒔いた枯葉剤の影響だと言われていたが、中国共産党とベトナム共産党の創作の可能性が高く、オレは信じていない。

知り合いの医者も「あれはプロパガンダとして利用された」と話していた。ドクちゃんはその後も日本とベトナムの架け橋になってくれたので、感謝しかない。兄のベトちゃんは早くに死んでしまった。萩尾望都の漫画「半神」も結合双生児をテーマにしているが、ピノコの場合は畸形嚢腫で腫瘍の中に人間になりそこなった臓器類が詰まっている設定だった。

手塚は天才だよ。手塚以外にこんな話は思いつかないからな。