「ウルトラセブン」(1967年~68年作品)第12話 感想 | 深層昭和帯

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第12話 遊星より愛をこめて

監督:実相寺昭雄 脚本:佐々木守 登場怪獣:スペル星人



<あらすじ>

宇宙で爆発が起き、多量の放射線が検出された。同時期、地球上では若い女性の白血球が減少して死亡するケースが相次いでいた。女性たちの共通点は腕時計。まったく同じものをしていたのだ。

アンヌの友人早苗もそのひとりだった。基地で時計の話を聞いたアンヌは、早苗に時計をくれた恋人を紹介してもらった。男の名は佐竹。佐竹は時計のことを訊いてもうやむやにして胡麻化すだけだった。その日時計は早苗の弟が身に着けており、彼は遊んでいる最中に脳貧血を起こして倒れたと学校から連絡があった。怪しんだアンヌはすぐにキリヤマに報告した。

ダンの応援を得たアンヌは、ふたりで早苗と佐竹の後を尾行した。佐竹は早苗から時計を受け取り、同じ型の別の時計とすり替えて再び早苗に手渡した。

早苗と別れた佐竹は、怪しい建物の中へと消えた。そこには数人の男たちがおり、白血球を結晶化したものを血液に戻して「これで我々の命が助かる」と喜び合っていた。早苗が付けていた時計の血を舐めた男が、これは新鮮な血だといって喜んだ。その血は早苗の弟のものだった。男たちは、子供たちから血を奪えばいいのだと確認し合った。

翌日のこと、宇宙船の絵を描いて腕時計を貰おうという企画のチラシが全国にばら撒かれた。男たちの仕業であった。子供たちは腕時計を貰おうとこぞって宇宙船の絵を描いた。フルハシとダンが言うことを聞かない子供たちを黙らせようと背広を脱ぎ棄てウルトラ警備隊のコスチュームになると、建物が爆発してスペル星人が姿を現した。

スペル星人は出動したウルトラホーク1号の操舵を破壊した。そのころ早苗の弟が佐竹と出掛けたと知ったソガとアンヌは、早苗とともにポインターで佐竹を追いかけた。ソガの銃撃によって佐竹はスペル星人の姿に戻った。それを見た早苗は強いショックを受けた。

ダンはウルトラセブンに変身して夕焼けの中、スペル星人と戦った。セブンのストップ光線でバリアを破られた円盤は修理を終えたウルトラホーク1号によって破壊され、スペル星人はアイスラッガーによって真っ二つに引き裂かれて死んだ。

<雑感>

第12話「遊星より愛をこめて」は現在欠番になっている。スペリウム爆弾の実験によって白血球が減少したスペル星人が、地球の若い女性や子供たちの血を狙ってやってくるという内容なのだが、この第12話はテレビで放送されている。

問題になったのはその3年後のこと。小学館の「小学2年生」の付録でこのスペル星人を「ひばく星人」と紹介するカードが物議を醸し、以来再放送はされていない。「現在」欠番になっているというのはそういう経緯で、制作者の誰にも被爆者を蔑む気持ちは持っておらず、それどころか核実験反対の明確な意思の下で制作されている。

悪いのは反日出版社小学館であり、円谷プロ及び制作者出演者の誰も悪くない。小学館に抗議すればいいのだ。しかも放送から50年以上が経過している。欠番扱いしているのは逆に差別に繋がるとさえ思える。テレビの再放送がダメならリマスターしてBDの販売などを考えてもらわないと、いつまで経っても汚い画像で観なきゃいけない。いい加減にしろと。

それにこの作品は、大変な傑作なのである。

実相寺昭雄氏の前衛的な映像演出、斬新なレイアウト、鮮烈な色彩、逆光の多用。それにとどまらず、ショートにしたひし美ゆり子さんの髪型がかなり決まっており、シリーズ随一の美しさが堪能できるか回なのだ。普段の隊員服だけではなくワンピース姿、白のニットに青のスカートなど、この回でしか見ることのできない。

アンヌの友人早苗役はウルトラシリーズでおなじみ桜井浩子さん。セブンで唯一の貴重なゲスト回でもあるのだ。桜井さんは佐竹に騙される若い婚約者の役で科白も多く、アンヌ隊員との掛け合いもある。「ウルトラマン」のフジ・アキコとアンヌが絡む貴重な映像をこのまま闇に葬ることがあってはならない。何としてでもリマスターして販売すべきである。

それだけではないのだ。スペル星人との戦いにおいて円盤に対してセブンが放つストップ光線は、本来は3回使用された技である。それが第12話の欠番扱いによって不当に回数を減らされている。

セブンがスペル星人に放ったアイスラッガーの表現も素晴らしい。真横になったセブンがそのままの態勢でアイスラッガーを放ち、水面を撥ねてからスペル星人に命中するのだ。夕焼けの中の戦いなので、非常に印象的な映像だ。詰め込まれながら無駄のない脚本も素晴らしい。

大傑作回なのである。事なかれ主義で現状維持が1番いけない。このまま貴重な映像作品を葬ることによって、被爆団体が悪者にされる恐れすらある。そもそも著作権が切れるのも時間の問題だ。早く決断すべき問題なのである。