「燃えよ剣」(2020年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

原田眞人監督による日本の時代劇映画。出演は岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平。

 



<あらすじ>

のちに新選組となる近藤勇率いる一派は、幕末の混乱期に生まれ、攘夷運動が盛んな京都に乗り込んで倒幕派の浪士を次々に殺害。彼らの活躍により、京都の治安は次第に回復してきた。ところが彼らが頼った芹沢鴨は酒乱で、彼がいる限り新選組の名は廃るばかり。法度をまったく守らない芹沢鴨を討つ必要性が生じてきた。

松平容保より芹沢の始末を命じられた土方は、沖田、井上、斎藤らを伴い芹沢鴨を襲撃。討幕派の仕業に偽装して逃走した。

池田屋事件で名を挙げた新選組は、新たに高い教養と家柄を持つ伊東甲子郎を参謀として迎えた。しかし政治的な彼もまた新選組の気風に馴染まず、内部分裂を起こしてしまった。時代の趨勢は倒幕に傾きつつあり、新選組の立場は危うくなっていった。

徳川慶喜が大政奉還を宣言。尊皇派だった伊東甲子郎を斬ってしまった新選組は幕府方として鳥羽伏見の戦いに参戦するも惨敗した。近藤勇は官軍に投降して斬首。沖田は病に倒れた。ひとり戦いを継続した土方歳三は、蝦夷地五稜郭に流れ、新選組副長の名誉を胸に討死した。

<雑感>

原田眞人監督による時代劇作品。2時間半の長尺の作品ながら、いつもの無駄を省いた編集でまったく飽きることなく楽しめる。原田眞人監督は、「駆込み女と駆出し男」(2015年作品)を視聴したときに名を覚え、10年以降の作品は機会があれば見るようにしている。どれも素晴らしい。

この監督は、共産党員ばかりの邦画界にあって比較的中立であること、邦画とは思えない情報量の詰め込み、徹底的に無駄を省いた編集、売れている俳優をそつなく使うなど、現在の邦画界にとって目の上のタンコブのような人物らしく、売れている割に低評価が付けられることが多い。アマゾンプライムに追加されたこの作品も、星ひとつである。見ればわかるがそんなわけない。

共産党支持を表明しない、ジャニーズを主演に使う、役者が早口で喋る、理解するための余計な時間を与えないなど、この監督は観客に集中して作品に接することを要求する。また長尺の作品が多くて、パッと楽しんで帰りたい人向けではない。

しかも、この映画の場合はちょっと気のふれた司馬遼太郎ファンにも絡まれそうで、同情してしまう。いまの司馬遼太郎ファンは、否定され過ぎてほとんどガンダムファンみたいになっているからな。

ネットの映画評論に否定的な監督だそうだが、そんなものは当然じゃないかな。ネットの意見は、「類は友を呼ぶ」を地でいっているだけで、意見の発信者と受信者がちゃんと向き合っていない。同じような意見を持つ人間が慣れ合っているだけの言論が、作品の評価に深く切り込めるわけがない。

☆5.0。岡田准一は「関ヶ原」(2017年作品)の石田三成に続いての主演。どちらも素晴らしい演技だった。

悠久の歴史の中で、小さく瞬きに過ぎない時代を切り取る手腕は、さすが原田眞人である。狂人どもの粘着に負けずこれからも良い作品で楽しませてもらいたいものだ。