「鉄腕アトム 青騎士の巻」(1999年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

桑原智監督による日本のアニメ映画。原作は手塚治虫。



<あらすじ>

ロボットのブルーボンは、人間に家族を殺され激しく憎むようになった。同型のロボットを狩っていく人間たちに愛想を尽かしたアトムはロボットの味方になり人間と戦うことになった。しかし憎しみでは何も変わらないと悟ったアトムは人間のために立ち上がり、ロボットのミサイルをなぎ倒していく。

破壊されたタワーの倒壊を阻止したアトムとブルーボンは、争いのない世の中が来ることを信じるのだった。

<雑感>

こんな話だったっけ? 記憶の中にある青騎士と違っていたようだが、読んだのは小学生のころ、しかも図書館で一度だけ、自分の記憶に自身がない。

巷間よく話題になる「鉄腕アトム」の中で最も人気のない作品であるが、アトムが人間の残虐さに愛想を尽かすアイデアは手塚によるものではなく、編集のアイデア。それは、鉄腕アトムが科学万能主義を肯定する良い子キャラになってしまった手塚のジレンマを感じ取った編集が、一度アトムを悪役にしようと提案したことから始まった。

手塚は科学を肯定的に捕らえる一方で、その使い方を誤ると大変なことになると科学を規定し、アトムというキャラクターに善の心を与え、人間の心の中の悪を告発する存在にしたかった。しかしアニメ化の影響もあって正義のヒーローになってしまったアトム像は、人間を否定する役割を果たせなくなりつつあった。

そこで一度アトムでさえ見限るほど人間の残虐性を描いてみようと思ったわけだが、人気は出ないし、焦った手塚が最後にアトムを殺してしまうし、ドタバタのうちに幕を閉じた作品、だと思っていたのだ。でもこのアニメではそう描かれていなくて戸惑った。

☆3.0。11分の小品。新しい技術で作ってあるので、動きがなめらか。