「どろろと百鬼丸」(1969年作品)第15話(いないいない村)感想 | 深層昭和帯

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暴れ牛を退治したどろろと百鬼丸は、さなかに俵五郎兵衛という旅の浪人に出会った。



俵五郎兵衛は豪胆な男で、百鬼丸の死霊退治の話を信じない。それでもしばし旅の友になろうという話になり、3人は風の吹くまま次の村へとやって来た。

その村には人が誰もいなかった。百鬼丸は死霊の気配を感じたが、超常の存在を信じない俵五郎兵衛には何も感じないので、その夜はその村に泊まることになった。

夜半のこと、天井の染みが大きくなって床に垂れると、それは生き物のように波を打ってのたくった。百鬼丸は天井に潜むものを斬り倒したが逃げられてしまう。俵五郎兵衛はそれでもまだ死霊を信じず、大いびきをかいて再び眠ってしまった。

翌朝、村を離れようとする3人の前に黒い子猫が姿を現した。百鬼丸はそれを死霊と認め殺そうとすると、見咎めた俵五郎兵衛が絶対にならんと間に入った。ところが黒猫は村中に溢れ、3人を襲撃してきた。3人はたまらず部屋の中に戻るしかなかった。

ほどなくして黒猫はいなくなったが、次はカラスがやって来た。カラスはどろろを襲って食おうとする。数が多くてどうしても村を離れることが出来なかった。

やがてそのカラスも姿を消した。猫は猫、カラスはカラスといって聞かない俵五郎兵衛だったが、百鬼丸がマタタビの木を切り倒し、根元から巨大な猫の骸骨が姿を現すと信じるほかなくなった。豪胆な俵五郎兵衛は死霊にも臆さず、百鬼丸とともにマタタビの木の死霊を倒した。

すると百鬼丸の耳が取れ、下から本物の耳が生えてきた。どうやら百鬼丸の話が何から何まで本当だったと知った俵五郎兵衛は、いたく感心して世には不思議なものもあるのだと認めた。

彼は風の吹くままの旅を続けると、どろろと百鬼丸と別れることになった。

という話。

手塚がこのアニメの制作に関わらなくなり、侍の描き方が少し変わってきた。俵五郎兵衛は好人物として描かれており、それまでの反戦思想丸出しの侍の描き方とは違う。

おそらくは手塚からギャグアニメにしてくれと指令があったときにはこの回はほぼ完成していたのだろう。ギャグという感じはあまりしない。どうも手塚はごく初期にしか関わっておらず、アニメオリジナルで完成を目指すことになった途端に口出しをしなくなったようだ。

戦いのシーンなどはまるで「装甲騎兵ボトムズ」を見ているようで、高橋良輔色が強い演出になっている。もうひとりの演出家の勝井千賀雄氏は、俵五郎兵衛とどろろが村を逃げ出そうとするときのコミカルな演出を担当したのだろう。

次回の演出は富野由悠季なので期待している。これがカルピスこども劇場第1作なのだが、富野由悠季は「海のトリトン」で手塚の作品を無断で改変してしまい虫プロを放逐、さすらいのコンテマンとなった後にロボットアニメの監督をやるようになる。

大人しくしていればまず間違いなく高畑勲と並んで世界名作劇場の柱となったはずだった。