「ブラック・ジャック ふたりの黒い医者」(2005年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

手塚眞監督による日本のアニメ映画。



<雑感>

テレビシリーズの再編集版。いくつかのエピソードから成り立っている。

元軍医で苦しんでいる患者を安楽死させることを信条としてきたドクター・キリコとの対比の中で、医者とは何かを考えさせる内容になっている。そして最後は死にかけたキリコを見捨てずに救出したのち手術を施して助けている。キリコは白い悪魔と称されているが、殺人鬼ではなく高い倫理観を持った医者である。

オレが安楽死について考えるようになったきっかけは間違いなくドクター・キリコだ。だが、全部ではないが原作を読んだ限り(単行本)、「治して役に立たない奴は安楽死させる」との本人の科白は相手に対する厭味みたいなもので、信条とはいえないというのがオレの見解。全体を通して、かなり高い倫理観で安楽死を請け負っている。その基準が戦後民主主義者と異なっているだけだ。

ブラック・ジャックは法や倫理に対するアンチテーゼだが、元軍医だったドクター・キリコは戦後民主主義に対するアンチテーゼであって、ブラック・ジャックと対になっているわけではない。パブリック・イメージとして、報酬さえ払えばどんな難しい手術もやってくれる闇医者と、報酬さえ払えば安楽死させてくれる闇医者がどちらも「黒い医者」とイメージされているという話である。

☆3.5。意外にブラック・ジャックと対比させてあると勘違いしている人が多い。