「母親たち / Duelles」(2018年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

オリヴィエ・マッセ=ドゥパス監督によるベルギーのサイコサスペンス映画。出演はフィーラ・バーテンス、アンヌ・コエサン、メディ・ネブー。

 

 

<あらすじ>

1960年代のベルギー。アリスとセリーヌは共に夫と息子を持つ主婦で、親父屋根の家に住んでいるよしみでプライベートで仲が良かった。そこにセリーヌの息子のマキシムが屋根から転落して亡くなる事故が起きた。アリスはその現場にいてマキシムに危険を伝えたのだが事故を防ぐことはできなかった。

おかしくなったのはアリスだった。彼女はセリーヌに復讐されると勝手に思い込んだ。自分の子テオの身に何かがあってはいけないと過剰防衛的になった。義母が死んだとき、アリスは夫に内緒で勝手に検視依頼をした。義母の身体から薬物が出ないとわかると彼女は持病の薬をセリーヌが偽薬とすり替えたと主張した。

夫は自分の母を勝手に解剖されたと妻に激怒した。薬の妖気が盗まれたとアリスは主張したが、それは車の中にあった。夫がそれを話してもアリスは聞く耳を持たず、容器を車の中で発見したのは自分だと自分に言い聞かせてそう思い込んだ。彼女は現実を受け入れることを拒否したのだ。

テオにはアレルギーがあったが、それを知らないセリーヌは彼にビスケットを与えて危うく殺しかけた。これもアリスにとってはセリーヌの殺人未遂だった。だがテオは自分の母がおかしくなって友達の母を虐めているのが嫌で、セリーヌのビスケットを危険だと承知で食べたのだ。

アリス一家は引っ越すことに決めた。アリスはセリーヌに謝罪した。セリーヌは寂しさを夫に訴えたが、夫は薄情な人間で取り合わなかった。セリーヌは夫を殺した。死は自殺として処理され、悲劇のヒロインになったセリーヌを憐れんでアリス夫妻は彼女を家に招いて泊めた。

セリーヌはアリスの息子テオを自分の子マキシムの代替にしていたのだ。夫を殺した理由も、テオには会うなと言い渡されたからであった。アリスの家にまんまと潜り込んだ彼女は、薬物を使ってアリス夫妻を殺害した。

その後、セリーヌは何もわからないテオを養子として引き取った。

<雑感>

女の怖さが凝縮された作品だった。まずアリス。女性に多い「アノヒトガー」を発症していて、自分の身に起きたことすべてを他人の責任にしている。こういうのはおそらく男性型の脳、女性型の脳が関係していると思われる。男性でも女性型の脳だと似たようなことをしそうだ。

セリーヌの行動原理は嫁によるとよく理解できるそうだが、オレは的確にどんな症状なのかわからなかった。夫とセックスが途切れていないアリスとレスになってもう子供が望めない自分と比較してしまっての犯行なのだそうだ。そう嫁に説明されてもやっぱりよくわからない。テオを奪ってアリスの位置に納まるとかそういうことでもないそうだ。そうだよな夫も迷わず殺しているし。

生き甲斐だったマキシムを失って新たな子供も望めないから、代替が欲しかった。テオがいなかったら誘拐していたと、そんな感じの理解でいいのか? 女の心理はよくわからんよ。そういう意味では女性を上手く表現していたのかもしれない。

☆4.0。アリスもセリーヌもよく描けていたがゆえにかなり恐ろしかった。