「宮城野」(2010年作品)感想 | 深層昭和帯

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山崎達璽監督による日本の時代劇映画。出演は毬谷友子、片岡愛之助、國村隼。

 

 

<あらすじ>

写楽の名前で絵を描いていた弟子が写楽を殺してしまい、その罪を馴染みの娼婦宮城野に罪をおっかぶせて自分は写楽の子供だか姪だかと結婚して自分が写楽に成りすまして生き延びる。

 

<雑感>

 

ディレクターズカット/インターナショナル版で再視聴。

この作品の良い点は映像。まずフィルムの映像が美しい。デジタルをフィルム風にしてあるのかどうか知らないが、観る限りにおいてフィルムと遜色ない。思い切った陰影のつけ方が往年の邦画を彷彿させて、まずそれだけで観る価値がある。

最後に写楽に成りすました矢太郎に一言釘指すシーンがあるのだが、背景の青々とした外の世界と、写楽に成りすましたとはいえ所詮は偽物に過ぎない矢太郎の黒々とした影との対比が素晴らしい。色彩の出し方などを見る限りはデジタル撮影したものをフィルム風に加工してあるように見える。

昨今の汚い画面ばかりの邦画とは思えない素晴らしい映像美だ。

次に良い点は構図であろう。ほぼ真横からの定点カメラが映し出す役者の芝居は、歌舞伎の舞台を観ているかのようだった。構図は完全に芝居風なのに、壁にプロジェクターで写楽の絵を映したり、映像に工夫があるのでどこか動きがある。風なども表現されていた。

役者の演技も素晴らしく、毬谷友子の宮城野は圧巻。魅せる芝居が上手い。科白回しは芝居がかっていないので聞き取りやすいのもいい。少ない登場人物を効果的に入れ替えてもいる。

低予算の時代劇かもしれないが、映像美を追求した作風なので気にならない。せわしなく画面が切り替わり、物語が二転三転しない分だけ、宮城野の情念が重苦しく描かれている。矢太郎の小物っぷりが宮城野を引き立ててもいる。

これは文句なしの。いかにも歌舞伎的題材で、歌舞伎的色彩に満ちた作品として完成されている。

☆5.0。とにかく美しい。この美しさはもっと極めていけるはず。