「オーケストラの少女」(1937年作品)感想 | 深層昭和帯

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ヘンリー・コスター監督による音楽劇。ダメオーケストラものの元祖になった作品。

 

 

ダメオーケストラが起死回生の演奏をする作品は洋の東西を問わず枚挙にいとまがないが、この作品が最初だ。

主演はディアナ・ダービン、アドルフ・マンジュー。

トロンボーン奏者のジョンは楽団の面接に落ちてしまった。彼はねこばばした金で家賃を払ったことも娘のパッツィーにバレて立場をなくしてしまった。

申し訳ない気持ちになったパッツィーは、父親が金をくすねたカバンの持ち主に謝りに出かけた。そこは大きなパーティー会場になっていた。するとカバンの持ち主フロスト夫人は少し酔っていて、お金の使い込みのことはどうでもいいようだった。

正直なパッツィーを気に入った夫人はみんなに彼女を紹介した。彼女は楽団員の困窮を話した。するとそれは楽団が足らないからいけないのだという人がいた。楽団を作ろうと思い立ったパッツィーはその場でスポンサーを募集した。夫人はこれに賛同してくれた。

喜んだパッツィーはこのことを父親に話し、楽団を首になって失業した人々を集め、失業者楽団を結成した。失業者楽団はガレージで練習を開始した。

ところがフロスト夫人はいい加減な人物でそんな約束のことなど覚えていない。我知らずと旅行に出かけてしまった。困ったパッツィーは夫のフロスト氏に直接掛け合うことにした。最初はいたずらの仕込みだと思って追い返したが、また妻が面倒なことをしたらしいとわかると仕方なく練習場のガレージに脚を運んだ。

実業家のフロスト氏は楽団は金にならないと見透かし、出資は断るとハッキリ告げた。しかし口論の中で有名な指揮者がやるならまぁ・・・と口にしたのをパッツィーは見逃さなかった。父親を採用しなかったストコフスキーのところへ押しかけ、直談判した。

リハーサル中だったストコフスキーは彼女を追い返したが、パッツィーは引き下がらず、彼のオフィスに勝手に入り込んだ。そこに電話があり、パッツィーはストコフスキーが失業楽団の指揮をするとウソの受け答えをした。

パッツィーは再びリハーサルに乱入して今度はオーケストラの演奏に合わせて歌い始めた。彼女の歌の才能に感心したストコフスキーだが、指揮の件は多忙を理由に断った。

気落ちしたパッツィーだったが、翌日新聞にストコフスキーが失業楽団を指揮する、スポンサーはフロストだと大きく載ってしまった。彼女が電話で話した相手は新聞社だったのだ。これにはフロスト氏も、ストコフスキー氏も、失業楽団も戸惑った。

話はこじれたが、フロスト氏の悪友たちがふざけてこれはいい話だ、ぜひやるべきだ、すごい宣伝になる、お前がやらないならオレたちがやると言い出すのでフロスト氏はこの話を流すのは惜しくなってしまった。彼は楽団のいるガレージに押しかけ、長期契約を約束した。

ところが問題なのはストコフスキーだった。気難しい芸術家で欧州ツアーも控えている彼は忙しくてそれどころではない。そこでパッツィーと失業楽団は彼の自宅に押しかけ、吹き抜けのホールで精いっぱいの演奏をした。それは素晴らしい演奏で、ストコフスキーの心を捉えた。

彼は欧州ツアーを延期して、失業楽団の指揮を執ることになった。そのコンサートで、パッツィーも政学科としてデビューを果たした。

という話。おそらく似た話の映画を観たことがある人も多いだろうが、これが本家にして最高の作品。古い作品だが感銘を受けること間違いなしだ。

父親の名誉のため、大好きな音楽のため、運が悪く職を得られなかった楽団員のために走り回るパッツィーの姿に感動する。フロストと悪友たちのやり取り、一途なストコフスキーの態度、すべて最高の作品だと思っている。

オーケストラ映画の傑作であろう。