「誰よりも狙われた男」(2014年作品)感想 | 深層昭和帯

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アントン・コルベイン監督によるスパイ映画。原作はジョン・ル・カレ。主演はフィリップ・シーモア・ホフマン。

 

 

かなり地味な主演である。演技は素晴らしかった。

イスラム過激派の男イッサが密入国してくる。テロ対策チームのギュンター・バッハマンはすぐさま彼と接触。すると彼は政治亡命を求めてギュンターに協力的な態度を取った。

イッサは何か別の目的がありそうだと睨んだギュンターは彼の目的がある人物の遺産を引き出すことだと知った。これが何を意味するのか探るために、ギュンターはさらにイッサを泳がせた。そして財産を持っている男の息子と接触した。その金はイスラム過激派の資金源になっていたのだ。

その名義はセブン・フレンズ。ギュンターはイッサを使って黒幕を逮捕するため、わざと送金させる作戦に出る。ギュンターはイッサにドイツの市民権を与え抱き込む作戦をCIAに提案した。

ギュンターの作戦は上手くいったが、確保した犯人の身柄はCIAに横取りされてしまった。

という話。あれだけ必死に捜査したのにギュンターの立場がない。イッサもどうなるかわからない。どこの国も諜報部はろくでもないのかもしれないが、ドイツ諜報部の人道的やり方に対して英国系の諜報部は暴力的ですぐに成果を欲しがる。おそらくは官僚機構の不安定さが彼らを短期的成果を得る行為に走らすのだろう。本当にろくでもない。

これはスパイ活動のリアルな描写に満ちていて、フィリップ・シーモア・ホフマンの演技が素晴らしい。一見普通のおじさんっぽく見えるけども、頭の中がフル回転している感じがちゃんと出ていた。

ジョン・ル・カレだからちょっと地味だけども、そこが彼の持ち味。やっぱり彼の原作は演技派を使うべきで、主人公力が高いとなんか違うんだよな。

つい最近視聴した「われらが背きし者」の主演ユアン・マクレガーは、演技派で素晴らしいのだけど、オーラが強すぎてちょっと違うんだな。本人は必死に地味な役に徹していたが、身体から放たれるオーラは消せないんだわ。

その点でフィリップ・シーモア・ホフマンはちょうどいい感じのおじさんなんだわ。ビール腹がドイツ人っぽいし。

これはなかなか面白かった。評価は☆5かな。