「少年探偵団 妖怪博士」(1956年公開)感想 | 深層昭和帯

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アマゾンプライムに置いてあった1956年より公開が始まった「少年探偵団」9部作の1作目。

 



児童向け映画で、「ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団」の歌が使われている。おそらくテレビシリーズの前身になった映画なのだと思う。

白黒作品で、画面もワイドになっていない。劇中に出てくる自動車などに年代を感じるが、外国の車であるためか何となく格好いい。

戦後、大人向けのミステリやエログロなどを書かなくなった江戸川乱歩は、ほぼこの「少年探偵団」シリーズだけに傾注しており、ポプラ社の「少年探偵団」シリーズが家にあった(すべて初版)オレなどはずっとジュブナイルの作家なのだと思い込んでいたくらいだ。江戸川乱歩の本当の姿を知ったのは中学に入ってからだと思う。なかなか衝撃的だった。

児童映画ながらドイツ表現主義の影響を受けた影を多用する映像は、のちに初代「ウルトラマン」など(実相寺昭雄がよく使っていた)でもおなじみのものだ。影を使った描写は当時の流行だったのか、石ノ森章太郎などが漫画の中でたびたび使用されていたものだ。

また怪人20面相を演じた役者が面白く、怪しげな乞食から洋館の独居博士、催眠術を使う老婆、明智小五郎のライバル探偵、洋館を買いに来た外人などかなり達者に演じ分けていく。白黒のぼんやりした映像がそれを可能にしているのだろうが、身体表現でちゃんと演じ分けているところなど基本に忠実だ。目を細めたり見開いたりして日本人と外国人を演じ分けるところなど素晴らしい。この映画を観るなら怪人20面相の変装には注目である。

戦後、江戸川乱歩はなぜ少年探偵団ばかり書いたのか。敗戦の焼け焦げた街並みをどうして描写しなかったのか。なぜ大人を見捨てたのか。この映画に出てくる、育ちも良ければ頭も良い少年たちの勇気溢れる姿を見ていると考えさせられる。

ところでこの「少年探偵団 妖怪博士」は続きものの第1部で、本当は解決編があるのだが、プライムには置いていないようだ。そこで次は第3作目の「少年探偵団 かぶと虫の妖奇」を観る。