高校生だった頃の思い出。
身体測定が行われる日、担任の教師が急にこんなことを言い出した。
「身長を測るときに背伸びをする奴は卑劣だ」
唐突だったので、生徒たちは皆ポカンとしていた。担任は長身の男である。180センチほどあった。教師は続けてこういった。
「身長を測るときに猫背になってうつむいている奴は卑屈だ」
何かを生徒に伝えようとしていることが分かり、我々は黙って次の言葉を待っていた。すると担任は大きく胸をそらしてこういった。
「背筋をしゃんと伸ばし、まっすぐ前を見たお前らの姿こそがお前らの本当の身の丈だ」
あれ以来、もう数十年になるが、いまだに身長を測るときは背筋を伸ばし、まっすぐに前を見る。
これがオレのいまの身の丈なんだなと思いながら。