いまだかつて誰も経験したことのなかった未曾有の大地震や津波によって、数え切れないほど多くの方々の生命が奪われ、残された方々も厳しい環境下での避難生活を余儀なくされています。
"あの日"を境に世の中が大きく変わってしまった、もはや"あの日"よりも前の世界に戻ることは出来ない…
そう感じます。
今回の震災は社会のいたるところに目には見えない"断層"を残してゆきました。
地震や津波、原発事故の被害を直接に受けた人々と被災地から遠く離れた場所に暮らす人々との間の"断層"。
被災地から送られてくる悲痛なニュースを目の当たりにすると、心からいたたまれない気持ちになります。
しかし、
そうしたニュースを目の当たりにして30分も経たないうちに、日常の雑事に溺れ、友達や家族と笑い合う自分に気づき、
被災地に暮らす方々から自分の気持ちが大きく離れてしまっていることに何とも言えない虚しさを感じます。
やはり直接被害を受けた訳ではない自分が、震災により多くを失った方々の気持ちを理解することは出来ないのかも知れません…
そして、もう一つの"断層"。
それは次から次へと絶え間なく流れ込んでくる情報の渦の中で慌て戸惑う人々の間に生じた"断層"。
ある時は情報の真偽を巡り、またある時は情報の解釈を巡って互いの見解の相違が次第に感情的な対立を招く。
そんな現象も見られました。
ある程度"共通の土台"を共有している(と思われていた)私達の間に突如生じたこうした断層のおかげで、
今後しばらくは、この、どことなくピリピリとした張り詰めた空気の中で暮らさなければならないのかも知れません。
決して"あの日"よりも前に戻ることは出来ません。
だからこそ今はただ願います。
亡くなられた方々の御冥福、そして被災地に暮らす方々に一刻も早く平穏な生活が戻ってくることを。
さて本日、
おかげさまで僕は東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、四年間の学業の一つの結果として学位を頂くことが出来ました。
あっという間の四年間でした。
宇宙工学をやりたい一心で上京したものの、
決して順風満帆という訳ではなく、幾度も迷い悩み、失敗もしました。
理工系の研究が本当に世の中の役に立つのか疑心暗鬼に陥り、宇宙工学の夢を捨てかけたこともありました。
出会いもあれば別れもありました。
人には言えないような恥ずかしい思いをしたことも。
もしかすると誰かの気を悪くしてしまったこともあったかも知れません。
学部卒業後の進路も本来希望していた米国大学院への進学は叶いませんでした。
そういう意味では僕は決してこの四年間の自分に満点をつける訳にはいきません。
むしろ及第してるのかどうか疑問です。
どうしても自分のことになると、こうやって減点法で評価してしまうのです。
だけどふと加点法で評価し直してみると、少し救われた気分になります。
大学での勉強やサークル、インターンシップやバイト、ボランティア、そして異国への旅…
全てに共通して僕が誇れることがもしもあるとすれば、それは僕がこうした活動を通して出会った仲間達です。
とりわけ自分とは考え方や生き方の異なる仲間との出会いは机上で得る知識以上に貴重な財産になりました。
ともすれば独りよがりに天狗になってしまいがちな僕には仲間の存在は常に不可欠でした。
数々の失敗がありながら、
それでもなお後悔ではなく充足感をもってこの四年間を振り返られるのは苦楽を共にしたみんなのおかげです。
そして最後にもう一つ。
以前、
社会福祉の第一線で活躍しておられる方の講演会に行った時に大変印象に残った言葉があります。
"感謝の気持ち…
今の時代に最も忘れられている感情ではないだろうか。
良い大学に入って、良い会社に就職出来たこと。
それは自分が頑張ったから、人一倍努力したから?
違う。それはたまたま自分が周りの環境に恵まれていたからだ。
衣食住に気を遣うことなく安心して努力出来る環境があったからだ。
「自分は頑張ったから成功した」という思考はやがて「あいつがみじめな生活をしているのは努力を怠ったからだ」という結論を導く。
現代社会の病理はここに根ざしている。
たまたま環境に恵まれていた人と恵まれなかった人の間に高い壁が築かれる原因となっている。"
こういう趣旨のご発言だったと記憶しています。
あまりにも多くの人々に背中を押されたからこそ今の自分がある。
僕自身、はっと気づかされたことが何度あったことか。
そうした意味で、
今日僕が頂いた卒業証書は僕一人のものではなく、
班太郎という人間を応援し、いっしょに多くの思い出を作ってくれた皆さんの卒業証書です。
この場を借りて改めて感謝致します。
とりわけ両親には幾ら感謝しても感謝しきれません。
宇宙飛行士として有人火星探査に参加する。
内閣総理大臣として日本の福祉・教育・外交・安全保障を建て直す。
二つの夢を叶えるまでには、まだまだ想像もつかないほど長い道のりが待っています。
班 太郎
![$宇宙飛行士を目指す22歳男のブログ-TS3M01300001.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20110325/19/astrohantaro/4d/ed/j/t02200367_0240040011125062686.jpg?caw=800)