――公演を終えて
「ほんと大変なことだらけでしたけど、まずはドーム公演ということよりも、一人でこの長さのスケートのエンターテインメントというものを作るということが非常に大変なことで。今シーズン初めてまず、単独で完全にプログラムを単独でワンマンで滑りきるというショーをやってみて。これ、2時間半持つかなって正直思ったんですけど、でも、ドームという会場だからこそできる演出と、MIKIKO先生やライゾマティクスさんや、本当に東京フィルさんだったりとか名だたるメンバーが集まってくれたからこそできた総合エンターテインメントが作れたのではないかなと今は実感しております」
――新しい表現の可能性の手応えは
「正直、課題も、もちろん出ていますし。もっとこうすれば良かったなとか、もっとこうできたなみたいなのももちろんあるんですけれども。ただ、今日このGIFTという公演に関しては1回きりで、ほんとにフィギュアスケートならではの一期一会な演技が1つずつできたということに関しては自分自身、すごく誇りに思っていますし、少しでもみなさんの中でほんの1つのピースでもいいので記憶に残ってくださったらうれしいなと思います」
――一人で観客に届けたかったこと
「もちろん自分自身が今までの人生の経験の中で、一人ということを幾度も経験してきましたし、実際に感じることもいまだにありますし。それは僕の人生の中で常につきまとうものかもしれないです。ただ、それは僕だけじゃなくて、大なり小なりみなさんの中に存在しているもので。もちろん、僕の半生を描いたような物語でもありつつ、でも、みなさんにとってもきっとこういう経験あるんじゃないかなってつづった物語たちです。少しでもみなさんの一人という心に贈り物をというか。一人になった時に帰れる場所を提供できたらいいなと思ってGIFTを作りました」
――ロンカプで因縁の4回転サルコーも
「北京オリンピックでやりきれなかったという思いが強くあったプログラムです。あのプログラムには夢をつかみきるという物語が自分の中にはあります。このGIFTってストーリーの中にも夢という存在がものすごく大きくあって。なんか、そういう意味でも、まず前半の一幕の中で夢をつかみきったっていう演出をしたかったというのが、ロンドカプリチオーソを選んだ理由です。ただ、北京オリンピックを連想させるような演出をした上でロンカプをやったのは、あの時に夢をつかみきれなかったからであって。あの時、夢をつかみきれなかったものを今はつかみ取るんだ、とか。逆にまだまだつかみきれていない夢も、もちろん4回転半だったりとかありますけど、それに向けてこれからも突き進むんだみたいなイメージを込めて滑らせていただきました」

――今日選んだプログラムを夢と関連づけようとしていたか
「なんか、それぞれのプログラムたちってやっぱり、それぞれ違う意味を持っていて。本来はGIFTっていう物語とはまったく関係のないプログラムだったんですよね。ただ、今回GIFTという物語の中にこのプログラムたちが入ることによって、もしくは演出とともにこのプログラムがあることによって、また新しい意味をつけられるんではないかなということを考えて滑りました。なんか、フィギュアスケートってもちろん歌詞があるプログラムももちろんありますし、だけど、言葉のない身体表現だからこそ、受け手の方々がいろんなことを感じることができるっていうのがフィギュアスケートの醍醐味かなって思っていて。だからこそ、物語を作って、で、その物語の中の1つのピースとしてプログラムが見られた時に、どんなことをみなさん受け取ってくださるかなということを考えながらプログラムを構成していきました」
――3万5000人のパワーと対峙した。今後にどう生きていくか
「正直、この会場に入って思ったことは自分って、なんてちっぽけな人間なんだろうってことでした。やっぱフィギュアスケートってほんとに一人の人間、もしくは二人の人間がやるスポーツですし。それを表現としてアートとして作り上げていくことももちろん大事ですけど、まずは僕は男子シングルなんで、男子シングルのスポーツ選手としてやる時に、ほんとにちっぽけな人間だなって。ただ、その3万5000人の方々、後はこの空間全体を使った演出をしてくださったみなさんの力を借りたからこそ、ちっぽけな人間であったとしても、いろんな力がみなさんに届いたんじゃないかなって気持ちはちょっとしているんですよ。だから、ある意味では震災の時に一人一人だったらきっと何もできなかったなっていう記憶とちょっと似ていて。みなさんの力が羽生結弦という1つの存在に対して集まったからこそ、絆があったからこそ、力が伝えられた公演だったんじゃないかなって思います」
――ドームの景色とは
「技術的に言えば、平衡感覚はすごくつかみづらかったです。まあ、スポーツ選手なんでそういうこと言っちゃうんですけど。でも、やっぱりこれだけの方々の前で歓声を浴びながら6分間練習だったり、試合のプログラムをいろいろやってみて、ほんとに幸せでしたし。なにより、こうやって一人の人間にこれだけの力が集まることってほんとに普通はありえないことなんで。幸せな経験をさせていただいたので、ちょっとでもこの幸せな経験から自分から発せられた思いだとか、そういったものが未来が見えない今の世の中に対して少しでも力になればいいなって思います」
――魂の世界を旅しているメッセージもあったのか
「う~ん、なんだろ。魂というより、僕の中ではペルソナ。みなさんがそれぞれ社会にいる時に使っている自分の顔だとか、仮面だとかそういったイメージで考えてくださると、僕にとってこうやってしゃべっている時だってきっと、自分が見せたい羽生結弦を出しているんだと思いますし。でもきっと、話しながらも心の中でくすぶっている羽生結弦もいるんだなと思っていますし。それはたぶん僕だけじゃなくてみなさんも。だから、少しでも自分自身が持っている、みなさんが持っている本質的なみなさんとペルソナのみなさんを認めていけるような、認めてあげられるような時間になったらいいなと思います」
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