プロローグ八戸千秋楽

マイクを持ったゆづは…下を向いた

「みなさん、ありがとうございました!」の後に何を言うのかと見入っていたら…

こらえるように下を向いたままで…

口を一文字に結んだまま…

パッと上げた顔は、涙が滲んでいた

聞いたことがないようなゆづの声が上がって…

ゆづは笑った

こんな時に笑いが出ちゃう人なんだなと思った

笑う人なんだなと思って、それがまた彼の込み上げるものの深さを思い知らされたような感覚にもなって…ただただ見入っていました

笑って…

泣き…

笑い泣きみたいで…
 
ほんとはほんとは、号泣したいんだろうなと思って…何かのたがが外れたら、きっとめちゃくちゃ泣くんだろうなと思って…それを必死に我慢して抑えようとしているのが笑顔になっているように感じられて…

これがゆづなんだなぁって思いながら見ていました




プロローグ、ほんとにめちゃくちゃ大変だったこと

ゆづの体力を含めて、本番を迎えるまでの下準備、迎えてからの運び、体調管理、何もかもがものすごく大変だったんだと伝わってきました

プレッシャーも凄まじいよね
『ケガをしました、公演は中止です』とは…なかなか言えないんだろうなと

アマチュア時代だと、ケガをしたり病気になったりして欠場しても、試合自体は行われる

けれどもワンマンショーではそうはいかない…とゆづは思っているはず

チケットを握りしめている方々は、自分のスケートを見に来る人たち、自分のスケートだけを望んで足を運んできてくださる方たち…それに対する責任はある…とゆづは当然思っているはず

それがまたプロとしての自覚と責任でもあると背負ってもいると思うの


そして、たくさんのスポンサーさんたちがついてくれていること、関連の諸々の予定、そういうのもゆづは一身に背負っているよね

 
同時に、支え続けてくださる方々の想いも感じ続け、それに対する恩返しをプロローグ完遂という形で表そうとしていたはず


もう本当に…プレッシャーはすごかっただろうと思います


加えて、初めてのワンマンショーで初めてのプロとしての興行…

みんなに受け入れてもらえるかという不安も怖さも尋常じゃなかったよね


精神的にも肉体的にも、かなりしんどかったはず


そういうのからの一区切り…束の間の解き放ち…安堵感や感謝の気持ち、喜び、達成感も押し寄せてきて、涙になったのかなと想像しました




そして、ゆづのこの言葉…

「正直、アマチュア終わったら…こんな景色二度と見られないんだろうなと思っていました」

私はびっくりしてね

本気で言ってる…?ゆづ…と思って


自分のことわかってる?って、ほんとにそんな風に思ってたの…?って驚いたんだよね


だって、ありえないってわかっているもん

そんなことあるわけないじゃんって思う


と言うのは、

外野のファンの心理なんだよね、きっと

当事者のゆづは…本当に見られないと思っていたのかも…


それがゆづなんだよね、きっと


不安と…恐怖と…憂慮と…そういう思いがあったんだろうなと


それはね、公演中の言葉にも感じる部分はあった

トーク中に
「もう見なくていいやって、なんか違うなって、羽生結弦興味ねぇなって思われたら悲しい」

笑いながら言ってたけど、ゆづの中にある一端の思いが垣間見れた時でした

また、千秋楽後のインタビューでは、「心が別に離れたとしても、ふと目に入った時にやっぱり羽生結弦のスケートって良いなって、ほんのちょっと1秒でもいいんで、思ってもらえるような演技をこれからも頑張って続けていきたいと思います」と言っていた

自分から心が離れていく存在を、想像しているんだろうなと感じました


これだけの需要があってよ?しかもそれは世界中からあるってもうわかっているし、証明もされている

これだけ世界中から求められているのに…

ゆづもきっとTwitterなんかで反応を見ていて、実感しているはずなんだよね


だけど、不安になるのがゆづなんだなって

自分から心が離れていく人たちのことを想像してしまうのがゆづなんだなって


それでも、ふと目に入った時に羽生結弦のスケートっていいなと1秒でも思ってもらえる演技を続けていくと言える…

ふと目に入った時…
1秒でもいい…


こういう言葉が出てくる人なんだよね、羽生結弦という人は



私が彼の『1秒』という言葉を聞いて、衝撃的だったのが2020年全日本

未曾有のコロナ禍という事態に世界中が飲み込まれ、ゆづ自身も長い長い沈黙後の10ヵ月ぶりの試合だった

そこに込めた思い…





誰かのためのたった1秒のために1年をかける人…

1秒のために1年間を注げる人…

こんな人他に知らない…と思ってね


自分自身も壮絶などん底を経験し、絶望の最中にあったというのに…

こんな顔して言ってたの…今でも鮮明に覚えてる…(;_;)

記者たちを静まり返らせた独白として世に出た言葉たちだったけれど、彼の本質を痛いほどに感じ入った時でした



それが、今回のプロローグでは、
 
ふと目に入った時…
1秒でもいい…

これからも頑張ってスケートを続けていくと言っていてね

彼の変わらぬ生き方を感じさせる言葉でした



もう見られないと思っていた景色…
あと何回こういう景色が見られるんだろうと思っていた最後の国内試合…2021年全日本

6分間練習に入る前、ゆづはいつものように歌っていたよね

口ずさみながら…

顔を上げて…

目にしたのは、満員の観客席かな

ゆづは、泣きそうになってた…

何かの拍子に涙が溢れそうになるのをこらえているように見えた

目は潤んでいた…


実質、これが最後の満員の観客席がある試合になったわけだけれど…


もう見られないと思っていた光景

もう二度と見られないと思っていた景色…


たった一人

ただ羽生結弦だけを見に来たその人たちの景色は、ゆづにどう映ったんだろうか

他の誰かじゃないよ

ゆづを求めて来ているんだよ

ここにいる人たちだけじゃない

目に見えるものがすべてじゃないってゆづはわかっているもんね

ライビュ、テレビ、ネット…その向こう側にいる膨大な人の存在も知っている

「もう二度と見られない」と思っていただけに、この景色は尚更ゆづにとっては大きなものを齎したかもしれないね


実感がこもってたなぁ


いい顔してるよね(;_;)

ハピバ嬉しかったんだよね



そして、この言葉ね

「こうやって僕なんかの演技を待ってくださって、これ以上ないくらい報われている」

ここでも泣きそうだったよね


なんか…この言葉はスッと入ってきたんだよね

横浜の現地で感じた心の波紋を感じなかったというか…すごくゆづの素の思いとして入ってきたの


報われる
報われないという言葉で思い出すのが都築先生

北京五輪フリー後、ゆづに送ってくださった言葉たち


「こんなに報われたスケーターがどこにいる」
「こんな報われ方をしたスケーターがどこにいる」


私はこの言葉を初めて聞いた時に、目が覚めるような感覚になったのと同時に、『ああ…都築先生はゆづに一生の課題を与えたな…』と思ったの



この言葉をこの時の状態のゆづにかけられるのは、世界中で都築先生しかいないと私は思っているんだけれど、これは都築先生じゃなかったらいけなかったと思っています

他の誰かではダメだった
 
都築先生だからこそゆづにとって意味があったと思っています



ゆづは、北京五輪時の修造さんインタビューで

「報われない努力ってある」
「『努力は嘘をつく、でも無駄にはならない』とここまで信じてやってきて、今は、いや無駄にもなるじゃんと正直思っています」
「命懸けでオリンピックの舞台まで本気で練習してきて、命懸けで演技をした時に、こうやってできなかったということに関しては無駄だったなと、正直思っています」
「結果取れなかったら無駄だと思います。僕はそういう人間なんで。申し訳ないけど」

と…立て続けに言葉を発していたよね


そうなんだろうと思う

ゆづがそう言うんだから、そうなんだろうと思うんだよね


この言葉だけでも、彼がものすごく現実主義でリアリストだということが伝わってくる

加えて結果を究極まで求めるアスリートでもある

この言葉はある意味で真理なんだろうと思う



けれども都築先生は、このゆづに「こんな報われたスケーターがどこにる」「こんな報われ方をしたスケーターがどこにいる」と問いかけた

まるで、『気づきなさい』と…『気づいていきなさい』と…『これから人生をかけて、一生をかけて気づいて見出していくのがあなたの使命ですよ』と…言葉の魔法をかけたように私は感じてね


報われなかったと泣きじゃくるゆづに…まるで天から差す言葉のように感じました


あなたはこんなにも報われている
あなたはこんなに報われ続けている

あなたはこんな報われ方をしている
あなたはこんな報われ方をし続けている


そこに気づきなさい
見出していきなさいと…かけたように思えてね


私が個人的にすごく印象的だったのが、都築先生は『報われ方』と言ったんだよね

これは…ものすごく深い意味を持つ言葉だなぁと思って


ゆづが言う北京五輪での自分の努力の報われ方とは、4Aを跳びきって、金メダルを獲得することだったのかなと思う

しかし都築先生は、それが叶わなかったゆづに対して、「こんな報われ方をしたスケーターがどこにいる」とかけたんだよね

まるで一生の課題だよね

謎解きみたいな…迷宮入りしそうな…でも光を感じる不思議な言葉…


それはね、ゆづの心にも届いている



あの言葉たちを、胸の中の芯に近いところに息づかせているゆづを…私は本当に好きだなと思いました

ゆづの本質が伝わってくる言葉



都築先生が言った『報われ方』ってね、一つは今回のプロローグなんじゃないかなと思うんだよね


それは、当初ゆづが望んで叶えようとしていた形ではなかったかもしれないけれど、『こんなに報われたスケーター』『こんな報われ方をしているスケーター』という意味においては、ゆづは今回一つ感じて見出したんじゃないかなと思っています

感じてくれているといいなぁって

そうだったらいいなぁって思ってるんだよ^^*


きっと、これからまだまだ都築先生のあの魔法の言葉による課題は続く…

ゆづは報われ続けていく…
こんな報われ方をしているスケーター…他にいないよなって、自分でその『報われ方』を様々に実感していくはず


と、私は思っています



…めっちゃ記事が長くなった!Σ(; ゚Д゚)ウハッ

(いつも)



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