時計製造には2通りの切り口があって、マニュファクチュール(以下MF)とエタブリスール(以下EB)と呼ばれており、
EBはそれぞれの部品会社からの供給をうけ、その部品をムーブメントに埋め込む分業製造のメーカーを指します。
MFは一からムーブメントの組み立てができる一貫製造のメーカーを指します。
EBだと、規格の部品を組み立てて完成となるので、構想から製造までの期間が短くて済む。パーツ製造の研究費がかさまないので安価で時計製造できるメリットがありますが、ムーブメントありきの時計設計となり、ケースのサイズや形状、文字盤の配置デザインあたりは限定されてしまう点がデメリットにあります。
MFとなると、ケース形状に収まるようなムーブメントひいてはそれらを構成する部品を製造できるので、ひらめきを具現化できる夢のある個性的なデザインの時計製造や、汎用品よりも技術力を売りにして精度が高いハイスペックマシンも搭載できるという自由設計なメリットがあるものの、構想から製造までの時間も研究開発費も膨大になってしまうというデメリットが生じます。
そのため資金力のある時計メーカーのみがMF製品を提供できるため数が非常に少なく、時計の価格も高かったです。
記載して思ったのが、『建売住宅』と『注文住宅』みたいだなぁ… 笑
『マニュファクチュールは製造にお金(コスト)かかってるから高級時計だ。』
『部品から製造できる技術力の高さは時計を知り尽くした信頼の証』
というい聞こえのいい響きが結構残ってきますよね。
逆に…
『エタブリスールは組み立て屋でメーカーとして重みを感じない』
『造る時計が金太郎飴』
などという屈辱的な評価も出てしまいます…。
(各パーツメーカーにもちょっと失礼な話だけど)
一方がプラス評価、片方がマイナス評価が強くでる傾向なので、両者の評価の開きがすごくなってしまうのかなぁって感じるのです。
「職人」「手作業」っていう昔は当たり前だったアナログなところに惹かれてしまうのが今の人間なんですよねー(^^;
合理的に考えると、エタブリスールの方が専門に作られた部品屋の品質で管理された時計で、なおかつ安いのだから理に適うのは明白なのですが…。
そこは『趣味の世界の道具』だから『メーカーのこだわり』や『惜しまない手間』や『厳選の素材』というのはとても大事に考えてしまっちゃうんですよね。割り切れない、譲れない部分なのですね。
長々と書きましたが、マニュファクチュールに憧れるのは、そこに「ロマン(愛)」があると思っているからです!
でもそれも昔の話で、現在はムーブメント製造最王手のETA社がムーブメントを供給しなくなった関係上、依存していた時計メーカーどこもかしこもMFになってしまいました。
そういうこともあってMFといってもどこまでが自社製造なのか(小さな部品や一部の機能を持ったパーツは仕入れているだろうし)が不透明になったり、ムーブメント自社製造といっても、その設計図は特許が切れたETAなどをベースとしたものであればコピーと呼ぶに近く、独自性が乏しく、かつて称えていたMFとは異なるメーカーも増えました。
マニュファクチュール盲信はほどほどに構えておきたいですね。