Vol.443 ETAの乱以降の時計メーカー | アスティアのひとりごと

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ヤフーブログからの続編としてロレックス、チュードルなど腕時計中心のブログです。またの名を 続・ミルガウス増殖計画

2010年、2020年問題とも言われた「エタの乱」

ETA問題と検索すればかなり広い情報が得られると思われますが、ムーブメント製造メーカーの最大手であったETAが資本グループ内の時計メーカーのみムーブメントを供給するという事を2000年に入ってちょっとした頃に騒ぎ始め、問題になったことがありました。

 

 

 

 

2010年問題…交渉を進め延長した結果2010年までに供給を終了すると宣言したことを指す

2020年問題…再度交渉をし2020年には供給を完全終了することで合意したことを指す

 

 

スイスの時計産業の8割以上(ほぼ9割に近い)がエタ製ムーブを利用しており、仕入れをしていた時計メーカーとの折衝も折り合わず、関係機関が介入しつつ何とか供給割合を徐々に減らしながら2010年、2020年を迎え、現在は供給をしない(一部供給が続いているメーカーもある)状況となります。

約20年という長きにわたり一つの問題が解決しましたが、そののちの時計業界はというと…。

 

 

 

・各社が自社ムーブメントの開発をはじめた。

・エタのジェネリックといわれるセリタ製ムーブメントに切り替えた。

 

 

とおおむね2つの動きがあり、資本力があるところが自社開発に舵を切りました。

その中ではマニュファクチュールとして自社一貫製造を目指した会社もあれば、複数の時計メーカーが資本を出し合って作ったムーブメント製造会社を設立したり、代用品メーカーのセリタの技術力を伸ばすために資金提供をしたり、いろいろな形で自動巻き時計の新たな道が開かれました。

 

最初はエタのやり口の横暴さに怒り心頭でしたが、ここまでの道のりを振り返ると、停滞していた産業に新しい道ができ、それぞれのメーカーの独自性が見え、同じシリーズのモデルでも中身のムーブメントが違うヴァージョンが発生したり、より時計の研究が楽しくなる未来ができたなぁと今となればよかったことのような気がします。

 

 

しかし問題点もあり…

研究開発にはコストがかかるため総じて時計の値段が上がってしまい、なかなか庶民の僕らが手に取ることも難しくなり、腕時計を趣味にしたいという人たちを門前払いしてしまう傾向が強くなりました。

さらにはメーカーの独自性が強くなったため、町の修理工房では知識がなく手が付けられないという可能性も増え、メーカー直送のOH(オーバーホール)という修理の選択肢も狭める結果を迎えそうです。

 

 

 

エタのなりたちはそもそもは第一次大戦後、完成品腕時計の輸出の関税が高くなったため、時計メーカーは半完成のムーブメントを輸出し現地で組み立てるという節税製造のケースが増えました。

販売国での製造がメインとなると、スイスの時計産業が衰退、崩壊する恐れがあり、技術流出防止と雇用保護の対策としてスイス政府の主導のもとムーブメントメーカーを合併し、一つの大きな集合体となって出来上がった経緯があり、そこがムーブメント輸出をしないという方法をとったので、スイスメイドの時計が今でも残っていることになっているようです。

まさに『スイス人が通ったあとにはペンペン草も生えない』という気質なのかもしれません。昔から…。

 

 

のちにその集合体は政府から民間へ移管され、クォーツショックなどを経てさらなる吸収や合併を繰り返したのがセル…いや、エタであるようなのです。

歴史を振り返ると、ひとつの産業を一社が独占する状態はとても危険です。

 

 

次世代自動車として有力な電気自動車などの開発がまさに時計業界の混沌にてらし合わせることができ、マニュファクチュールとなるか連合企業となるか一つの集合体となるか、いずれにしても購入費用や維持費用は内燃機関のそれとはくらべものにはならない負担増は覚悟しなければならないのかなって感じます。

日本政府主幹で次世代自動車メーカーを作り、スイス人の鼻を明かすくらいのことをしてほしいなとは個人的に感じますが…難しいだろうなぁ。(ライバル国に流出させる一部の売国奴もいるかもしれないので日本人とて信用に足る人はどこまでいるか…)