僕が持っている初代オイスタークッションの研究の結果、わかったことを記載することにします。
保有して2年以上が経過し、調査を進めてみても多くはない資料と、そんな中で見つけた複数の資料の突合せで合致するという部分はもっと少なく、かなり僕の予想という要素を含めた結論が多々ありますが、初代オイスターをお持ちの方やアンティーク時計の研究を同じくされている方もご参考になるものがあれば…と感じます。
Vol.43 ロレックス、初代オイスタークッション研究所だより(1)
Vol.57 ロレックス、初代オイスタークッション研究所だより(2)
Vol.65 ロレックス、初代オイスタークッション研究だより(3)
今回はケースの裏蓋にある情報を紐解いてみます。
では、順に説明しますと、
◇ R.W.C.LTD
言わずと知れたこのケースを組み立てた、英国のロレックス・ウォッチ・カンパニーの略です。今でこそロレックスはスイスの企業ですが、イギリスで産声を上げた時計メーカーです。
◇ .75の表記
オイスタークッションケースには発売当初銀ケース、9金ケース、18金ケースがありました。
ラグが太くなった1930年代後半からのオイスタークッションケースだとニッケル合金のものもあります。これは、オイスタークッションケースの衝撃耐性、防水性の向上で、それまで時計をつけてしなかった激しい動きを可能にしました。そのため細いとラグが壊れてしまうという事例があったことからラグ幅を広げたのでありました。
傷に強く変形にも強い素材という点においてもスチールケースの登場は納得いくものであります。
画像の裏蓋情報から「.75」は750ポイントの金を使用しているので18カラットのケース、つまり18金のケースであることがわかります。
当時のそれぞれの時計の定価を現在価格で換算すると、シルバー925ケースが30万、9金ケースが60万、18金ケースが90万というところだという資料がありました。
今でこそロレックスで100万円を超える時計はざらにあるのでおどろかないですが、当時100万円する時計はそうそうなかったことだと思います。1920年代後半は腕時計をすることだけでもステイタスでしたのでモデルの最上級の素材となると市場で販売されている数はとても少なかったものだということは想像に難くないです。
◇ 横になったFが折り重なっている
英国の港町グラスゴーで輸入されたことを示しております。貴金属の輸出入が1920年代から厳しくなり、このグラスゴーでは輸出入を許可された場所だったのではないかと推測されます。この時代のロレックスの裏蓋にはこのマークがついているものが多いです。
◇ 260554 / 1925 の表記
1925年に最初のオイスターケースの特許で許可された番号です。上にある弓なりの英文に GREAT BRITAIN PATENTSがあるので英国での特許番号になります。
◇ 壬 114.948 と 壬 120.851 の表記
まず、壬は文字判別ができないので日本語で一番近いものを記載しています。114.948はスイスで取得した最初のオイスターケースの特許番号で、120.851は改良し、追加取得した特許番号です。こちらはスイスでの特許番号となります。
◇ ロット番号・リファレンス番号
一番最後に大きな数字の刻印がそれにあたります。
ここの数字が製造番号(シリアルナンバー)とリファレンスナンバーの2段表記になっているものを多く見ます。僕の時計の裏蓋には製造番号(シリアルナンバー)のみだと思います。
ほかにも裏蓋の表面(腕に当たる部分。外側)に製造番号とリファレンス番号が刻印されているオイスターもありますが、こちらは後期(1930年代半ば)に入ってからよくみられます。
ケース内部にリファレンス番号の刻印がある個体もあるようです。
この部分は自分の時計の画像ではっきりとみえるものを持っておらず、確認できませんでしたのであくまでも予想です。
1920年代の時計に保証書があったのかどうか不明ですが、裏蓋の情報がその時計を表示していると言って過言ではありません。
簡単に開閉できるものではないのでこの情報はなかなか見る経験がないのですが、時計の内容がよくわかる部分です。愛すべき時計の中身をぜひ見てあげてください。
また、これからアンティークロレックスを探される場合は、裏蓋の情報を把握しているお店で購入する方が安心に感じます。