帝国と植民地の類型と歴史【続き】――西アジア大破壊を阻止するために | 草莽崛起~阿蘇地☆曳人(あそち☆えいと)のブログ

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    平野健「資本主義的帝国主義と低開発」経済学研究56-2 北海道大学2006.11【続き】

1.4.軍事的強制力
 軍事的強制力とは,武器・軍隊による高い殺傷力と破壊力,およびそれから生じる畏怖によって余剰収奪を強化する強制力である。

 

 軍事的強制力を中心とした帝国においては,余剰収奪を拒まない限り,征服地・被支配国の生産関係,統治システムは維持され,それを利用して余剰収奪が行われる。ここでの富の獲得手段は,軍事力である。軍事的強制力における権力者は,軍事力の頂点にいる者である。

 

 軍事的強制力を中軸とする帝国は,征服地から定期的に生産物を献上させる貢納制をとる。黎明期から拡張期のモンゴル帝国はまさにこれに当たる。モンゴル帝国はその強大な軍事力によって,ヨーロッパ文化に深い畏怖の念を刻み込んだが,決して恐怖政治による支配などではない。むしろ,征服地の生産・文化を認め,それに順応して統治していったという点では多様性に富んだ帝国であった(杉山1996)。

 

2.非資本主義的帝国主義の生産関係
 非資本主義的帝国主義における奴隷制や小作人制などの生産関係は,帝国権力の中心的役割を果たす経済外的権力の一器官として機能する。この非資本主義的帝国による諸生産関係の利用の仕方には2つの傾向がある。帝国全体を同質の生産関係で支配する「同質化帝国主義」と,帝国内の地域ごとに異なる生産関係を維持・支配する「異種混合帝国主義」である。

 

2.1.同質化帝国主義
 生産関係から直接的に余剰収奪を行う帝国主義は,領土内の余剰収奪を画一的に行うために生産関係を同質にしようとする。このような帝国主義を取るのは,官僚制・法的強制力および土地所有の強制力を中軸とする帝国である。この強制力は,官僚や貴族などにより,直接的に土地とそれに付随する労働力とを支配する。そして,その支配を行き渡らせる為に,帝国領土全体の生産関係を同質化する。

 

 統治あるいは領土拡大のための軍事力の維持は,帝国のコスト負担を増加させるとともに,土地と労働力の管理を怠らせる原因ともなる。このような膨大なコストを賄うために富が必要であるが,それを生み出す生産関係は,生産性の向上が図られない奴隷制や小作人制などのままであるため,権力者は労働者の生活を犠牲とした収奪を強化する他ない。これはさらに土地と労働の状態を悪化させ,悪循環に陥らせる。このような悪循環が帝国の崩壊のプロセスであり,最終的には他国からの攻撃によって瓦解する。

 

2.2.異種混合帝国主義
 生産関係から間接的に余剰収奪を行う帝国主義では,各被支配地域の生産関係をそのまま維持するため,帝国域内で様々な生産様式が存在することになる。このような帝国主義を取るのは,商業的強制力あるいは軍事的強制力を中軸とする帝国である。この強制力は,商業的活動・軍事力における独占・優位性を保つことさえできればよいのであって,生産関係の統治は直接の目的ではない。したがって,生産関係の維持を現地の統治システムが,帝国の求める交易や献納に従属的に応えるのであれば,むしろ生産関係は現地の統治システムに維持させておきたいのである。

 

 異種混合帝国主義における余剰収奪は間接的なため,収奪にロスが生じる。交易や貢納では全ての富が帝国に持ち込まれる訳ではなく,富が現地に滞留する。そのため,その富を現地の統治システムが富を蓄積することによって,帝国から離脱し得る権力を獲得する可能性が常にある。被支配地の帝国からの離脱は,そのまま帝国の富の減少を意味し,帝国の崩壊を招く。

 

 非資本主義による同質化帝国主義および異種混合帝国主義の限界を乗り越えることができるのは,資本主義的帝国主義のみである。資本主義においては,常に生産力の上昇を図る資本主義的生産関係が,収奪の強化と同時に生産関係の維持を実現する。資本主義的生産関係は経済外的権力の一器官としてではなく,余剰収奪を実現する自立した権力,つまり経済的権力を構成する。自立した経済的権力は,経済外的権力をも再編成する

 産軍複合体の出現は,資本主義においては必然的な事象である。

 

 再編成された経済外的権力は,国民国家の形態をとる。資本主義的帝国はさらに,この国民国家を周辺部に従属的に作り出し,周辺部の生産関係を周辺部自身に維持させながら,圧倒的な経済的権力により周辺部の市場を隅々まで支配し,漏れなく余剰収奪を行う。

 とはいえ、この場合は商業的権力の場合と同様にわずかとはいえ、支配地で富が蓄積される余地も残るのではないだろうか?「隅々まで支配」,「漏れなく」という表現はいくぶん誇張的であろう。

  

 

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