環境破壊から人間が受けるダメージは,その人の社会的立場によって違ったものとなりやすい。
先進国が化石燃料を大量に消費して近代的な生活環境を享受した結果CO2が増大しそれが温暖化を引き起こした可能性がある一方で,温暖化による海面上昇や砂漠化,森林減少などの影響は,近代的生活を享受する機会がより少ない発展途上国において深刻である。
国内的に見ても,廃棄物処理場や原子力,火力,水力など大規模発電所など,環境負荷を発生させる恐れのある施設は,第1次産業以外の発展が遅れがちな地方の郊外や農村に集中しやすい。
経済発展の不十分さが,環境負荷を回避する手段の不足,環境負荷がより少ない選択肢を選ぶ余地の欠如をもたらすのである。
また,まだこの世に生まれてきていない将来世代は,現存世代の行動によって,資源枯渇や生態系の破壊が進めば,まったく自分たちがあずかり知らない要因によって被害だけをこうむることになる。
こうした状況を改善するためには,地域間・世代間の格差・不公平を是正するような発展の保証がなされなければならない。すなわち,将来の世代や特定の地域の人々の発展の権利を損なうことのない発展と環境保全の両立が課題となる。