物象化とフェアトレード | 草莽崛起~阿蘇地☆曳人(あそち☆えいと)のブログ

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自虐史観を乗り越えて、「日本」のソ連化を阻止しよう!

物象化とは人と人との関係である社会的分業 が、物と物との関係、すなわち諸商品と貨幣との交換関係に媒介される結果、商品と貨幣が結ぶ関係の奥にある人間同士の関係が見えにくくなっていることを言います。例えば、カカオ農家、製菓機械メーカー、製菓会社の社会的分業が直接的には見えにくいものとなっているために、チョコレートの消費者が知らないうちにカカオ農場での児童の低賃金労働を助長する結果となっていることが指摘されています#。実際の社会的分業が児童の低賃金で苛酷で危険な労働を利用したものになっていることが消費者からは見えにくくなっているのです。これは、物象化の具体的な一例に他なりません。
 
 
生産関係が物象化していてもいなくても労働生産物は人と人の間を行き来します。そして、フェアトレードは、この生産物の「取引」を使って社会関係を変えようとする活動です。そのため、通常の物象化された商品取引とフェアトレードの違いは、理論的、抽象的にだけ、考えてしまうと、必ずしも分かりやすいものではありません。
 
では、物象化とフェアトレードにはどんな違いがあるのでしょうか。物象化の場合は、人と人との関係は表層に現れず深部にとどまっています。人と人との関係は、人目にはほとんど触れることがなく、物と物の関係以外は見えにくくなっている状態です。これはチョコレート生産をめぐる社会的分業関係においては、チョコレートとカカオの関係[カカオがチョコレートの原料であること]は知っていても、カカオの生産過程での労働の在り方[過酷な児童労働]を知らない状態です。そして何も知らないまま物象としての商品を受け入れることで、過酷な労働の在り方の維持や拡大に手を貸してしまっている状態です。
 
これに対して、フェアトレードは、最初から労働の在り方に目を向けて、労働の在り方を変えるために取引することを意味します。この場合には、人と人との関係は、深部に隠れたままにはなっていません。フェアトレードに参加する人が最も注目しているのは、労働の在り方なのですから、この時労働をめぐる人と人との関係は表層に現れているのです。そこでは、チョコレートは物象であることをやめています。フェアトレードによって人と人との関係[児童労働を利用するチョコレート生産]を意識的に変えようとする人にとって、自分が手にする労働生産物は、彼がそれと気づかないうちに、彼を自然発生的な社会的分業に巻き込んでしまうような働き(物象的な作用)を持たないからです。むしろ、そのような働きをする物象とは逆に、人間の側が意識的・自覚的に社会的分業を調整するための手段になっています。








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