資本による労働の支配 | 草莽崛起~阿蘇地☆曳人(あそち☆えいと)のブログ

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自虐史観を乗り越えて、「日本」のソ連化を阻止しよう!

資本による労働の支配の例として、自動車工場の生産現場の様子を調査した本の内容を紹介します。人間に人間が支配されるのではなく、機械(資本の一形態;GW{Pm/A} …PW’G’Pm)によって支配される様子が描かれています。
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1 機械や道具をとおして行使される権力 
   
職制は現場に出て労働者を直接管理しなくても、機械をとおして労働者を間接的に管理することができる。その最たる例がコンベアラインであろう。指示をしなくても、ベルトコンベアが労働者に作業を強要してくれる。このような管理の手法は、トヨタに限らず自動車工場一般、さらには製造業一般にみられる。だが、コンベアラインではないここの職場では、もっときめ細かな仕組みで労働者を管理している。
洗浄周り作業では、部品を入れる箱 ( =「かんばん」 ) が労働者の管理に重要な役割を果たしている。本来、「かんばん」は生産管理のための道具の一つにすぎない。だが、その「かんばん」が周囲の目にさらされることで、間接的に労働者を管理しているのである。洗浄品シュートにどれくらい空き箱がたまっているかをひと目見るだけで、作業の進捗状況、労働者の勤務態度を把握することができる。シユートに空き箱が多くたまっていれば作業者の怠慢を意味し、ほとんどたまっていなければ作業がきちんと行われているとみなされる。職制が時々見回りに来るのだが、彼らが職場に来てから作業を取り繕ったとしても間に合わない。したがって、洗浄周りの作業者は、目の前で監視されていないからといって、決して手を抜くことはできないのである。しかも、シュートは見えやすい場所に設置されている。だから労働者は、姿の見えない職制の目を常に意識せざるをえない。洗浄周りの労働者は、「かんばん」を介した権力の視線にさらされながら働いているのである。
組付作業の場合は、組付機械が労働者の動きをコントロールしている。組付機械には「ポカヨケ」と呼ばれている装置が取り付けられていて、作業ミスがあったり加工不良が発生したりすると、機械が自動的にストップする仕組みになっている。この装置によって不良品が後工程に流れることを防いでいるのだが、同時に労働者の動きは細部にわたって統制されている。
しかも労働者は、組付機械をとおして物理的に統制されているだけではなく、心理的にもコントロールされている。身体的にも心理的にも余裕のない作業だけに、ラインが止まるたびにベアを組む作業者は「またかよ」と舌打ちする。その上、ランプが点灯しブザーが鳴るために周囲の目にもさらされる。このような環境下で働く労働者は、「ペアを組む作業者に迷惑をかけたくない」、「恥をかきたくない」の一心で、できるだけ速く正確に作業しようと努力する。ラインをストップさせるたびに、無能さをみんなに責められているような気になるからだ。「ポカヨケ」やランプ、ブザーといった仕掛けが機械に組み込まれていることで、権力の眼差しが職場の隅々まで行き渡るのである。ライン労働者は、職制に直接管理されていなくても、権力の視線を常に意識しながら必死になって働いている
ただし、近年のトヨタは、傾向としては、このような自動化装置には過度に頼らないようにしている。職制の話によれば、「自動化装置を機械に取り付けすぎると、労働者がそれに頼りきってしまい、高い意識を持って働かなくなる。そうなると、ちょっとした機械のトラブルにも、現場では対応できなくなってしまう。ここのラインでは、できるだけ『ポカヨケ』などの自動化(自働化)装置を取り付けないようにしている」。経営側は、この新たな方針を「視える化」と名づけて積極的に、推し進めている。(伊原亮司『トヨタの労働現場』桜井書店)  
  
  
 

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