時短勤務で年金が減る?育休復帰後に“将来の年金受給額への影響を減らす”2つの制度(知らないと損)
育休明けの時短勤務は、子どもとの時間を守る大事な選択。
でも同時に、給与が下がる=社会保険の等級(標準報酬月額)が下がることで、将来の年金額まで静かに下がる可能性があるのをご存じですか?
ただ安心してほしいのは、国はちゃんと“救済制度”を用意しています。
問題は「知られていない」「案内されない」ことがあるという点。
今日は、子育て世代が損をしないために、絶対に押さえておきたい2つの制度を、できるだけ分かりやすくまとめます。
こんにちは。
私は普段、共働き世帯の家計と資産形成の相談を受けています。
その中で、産休・育休明けのタイミングで必ず話題に上がるのが、「時短勤務にするかどうか」です。
そして、ここで多くの方が気にするのが、手取りの減少。
でも、もう一つ“後から効いてくる”論点があります。
それが、「将来の年金」です。
■ なぜ時短勤務で“将来の年金”が減ることがあるの?
時短勤務になると、給与が下がるケースがほとんどです。
給与が下がると、健康保険・厚生年金の保険料を計算する基準である「標準報酬月額」(いわゆる社会保険の等級)が下がりやすくなります。
標準報酬月額が下がると、毎月の社会保険料は軽くなる。
これは短期的には嬉しいです。
でも同時に、厚生年金の計算は報酬(標準報酬月額)をベースにするため、下がった状態が続くと、将来の年金額にも影響が出る可能性があります。
つまり、
「今の手取り」だけでなく「老後の受け取り」までつながっているということです。
結論(超シンプル)
時短勤務 → 給与が下がる → 標準報酬月額が下がる →(放置すると)年金が下がる可能性
■ 制度①:育児休業等終了時報酬月額変更届(社会保険料の負担を早めに軽くする)
まず、多くの会社で案内されやすいのがこの制度です。
育休が終わって復帰した後、時短勤務などで給与が下がった場合に、条件を満たせば、社会保険料(健康保険・厚生年金)の等級を早めに見直せる仕組みです。
会社(事業主)が日本年金機構に提出する届出で、提出方法は電子申請・郵送・窓口持参などが案内されています。
一次情報(日本年金機構):
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html
ここが落とし穴
この制度①だけで終わると、等級(標準報酬月額)が下がった状態のままになり、
将来の年金額が下がるリスクが残ることがあります。
■ 制度②:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(年金を“下げない”ための制度)
ここからが今日の本題です。
時短勤務で等級が下がると、年金額も下がる可能性がある。
じゃあどうするか?
その“対策”として用意されているのが、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。
名前は難しいですが、考え方はこうです。
子どもが3歳になるまでの養育期間は、報酬が下がっても“下がる前の高い等級で年金計算していいですよ”
つまり、
保険料負担は軽くしつつ、将来の年金額を守るための制度なんです。
一次情報(日本年金機構・制度の概要):
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
一次情報(日本年金機構・申請案内ページ):
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20141203.html
一言でいうと
制度①=今の社会保険料を調整する(手取りのため)
制度②=将来の年金額を守る(老後のため)
目的が違うので、セットで知っておく価値があります。
■ なぜこの制度②は“知られていない”のか
正直、これが一番やっかいです。
制度②は、制度名が難しい。
そして、会社側としても毎年頻繁に使う手続きではない。
その結果、現場ではこういうことが起きます。
・人事担当が制度②を知らない
・「前例がないので…」と言われる
・社労士さんでも「それは初めて聞いた」というケースがある
・結果、案内されず、申請されないまま時短期間が過ぎる
でも、ここは強く言いたい。
「会社が知らない」=「制度がない」ではありません。
国(日本年金機構)が一次情報として制度を公開しています。
だから、もし社内で話が止まったら、感情で押すより、URLを添えて淡々と確認するのが一番早いです。
参考(制度概要):
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
■ 申請で損しないための“現実的な動き方”
子育て中は忙しいです。
「制度は分かったけど、結局なにをすればいいの?」となりますよね。
ここはシンプルにいきます。
やることは“人事にセットで確認する”だけです。
人事に確認する2点
① 育児休業等終了時報酬月額変更届(制度①)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html
② 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(制度②)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
もし「そんな制度は聞いたことがない」と言われたら、
申請案内ページ(手続きの入口)も一緒に渡すとスムーズです。
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20141203.html
■ 人事に送る“そのまま使える”一文(コピペOK)
お世話になっております。育休復帰後に時短勤務となり報酬が下がる予定のため、
「育児休業等終了時報酬月額変更届」の手続きを確認したいです。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html
併せて、将来の年金額への影響を避けるため、
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(3歳まで)」の申請も可能か確認をお願いします。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
申請案内: https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20141203.html
■ 最後に:国は制度を用意している。でも“教えてはくれない”
子育てって、ただでさえ情報過多です。
仕事、保育園、病院、家事、寝不足……。
その中で「年金の制度まで調べる余裕なんてない」と感じるのも当然。
でも、ここだけは現実として知っておきたい。
国は制度を用意している。
でも、申請しないと使えない制度もある。
だからこそ、子育て世代は、
「知らないことで損しない」ために、最低限の制度だけ押さえる
これが家族の未来を守る、すごく現実的な一歩だと思います。
この記事の要点(超短く)
・時短勤務で等級が下がると、年金も下がる可能性がある
・制度①:社会保険料の負担を早めに調整(育児休業等終了時報酬月額変更届)
・制度②:年金額を守る(養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置/3歳まで)
・案内されないこともあるので、自分から確認する
▼一次情報(日本年金機構)
制度①:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html
制度②:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
申請案内:https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20141203.html
▼公式サイトはこちら