台風の影響で、久しぶりにテレワークをしました。
コロナ禍の頃、京都大学元総長の山極壽一先生の講演を聞く機会がありました。そのときに印象に残ったのが、「霊長類は視覚と聴覚だけでは十分な信頼関係を築けない」という話です。
人は対面で会い、同じ空間を共有することで、表情や雰囲気、空気感など多くの情報を受け取りながら信頼関係を築いています。そのため、オンラインだけのコミュニケーションには限界があります。
私自身、コロナ禍ではその難しさを痛感しました。
当時の勤務先で、副社長とメールでやり取りをする機会が多くありました。その副社長は東京大学文学部で哲学を学ばれた方で、メールの文章も非常に思索的でした。一方、私は効率を重視する理系タイプで、結論まで最短距離で進みたい性格です。
そのため、メールに込められた意図や行間を十分に理解しないまま返信を続けてしまい、結果として副社長を激怒させてしまったことがありました。
文字だけのコミュニケーションでは、相手の感情や真意を正確に読み取ることが難しいものです。この経験以来、大切な話ほど直接会って話すことを心掛けるようになりました。対面であれば、表情や声のトーンから相手の気持ちを感じ取ることができるからです。
一方で、今回のテレワークでは新たな発見もありました。
在宅勤務では、Microsoft Teamsを使ってオンラインで会話をしました。普段は同じフロアで働いているため、周囲の目や耳が気になることがあります。しかし、自宅から参加していると、誰かに聞かれる心配がありません。
そのおかげで、部下と普段以上に率直な話をすることができました。
昭和の時代には、上司が部下を飲みに誘い、本音を聞く機会がよくありました。しかし令和の時代では、そのような関係づくりも簡単ではありません。場合によってはパワハラと受け取られることもあります。
入社してまだ2か月ですが、今回のテレワークを通じて部下の本音に触れることができたのは大きな収穫でした。
テレワークには、人と人との信頼関係を築きにくいという欠点があります。しかし一方で、場所や周囲の環境によっては、かえって本音を引き出しやすくなるという意外な利点もあります。
今回の経験から、テレワークは対面勤務の代替ではなく、それぞれの長所を生かして使い分けることが大切なのだと改めて感じました。