しかし、成長モデルの転換が一筋縄ではいかないのも事実だ。今年1~3月期の米経常赤字は、前期比34%減の1015億ドル(約9兆4500億円)となり、四半期としては2001年10~12月期以来の低水準となった。5月の貯蓄率は6・9%と15年ぶりの高水準に戻った。景気後退や失業率の上昇で過剰消費は修正されつつあるが、世界経済の回復を短期的には遅らせることになる。

最大の経常黒字国の中国には内需拡大主導への転換を迫ることになる。しかし、中国は人民元の上昇を抑えて輸出競争力を維持するためにドル買いの為替介入を続ける結果、1兆9500億ドル(3月末)と世界最大の外貨準備を抱え、その約65%を米国債などドル資産で運用することで景気対策で膨らむ米財政赤字を穴埋めする役目を負っている。米国債の購入を一気に減らせば、ドル安を招き、ドル基軸体制を揺さぶりかねない。


 4月にロンドンで開かれた主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)など過去の国際会議で、米中が不均衡問題の協議に消極的だったのは、「パンドラの箱」を開けることにもなるからだ。しかし、ポールソン前米財務長官が昨年11月に「別の出口を見つけない限り、圧力は蓄積され続けていく」と語ったように、世界が目をそらし続ければ、次のバブルと危機を生む危険をはらんでいる。


産経:金融危機の温床「グローバル・インバランス」解消で協調へ 2009.07.09
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090709/fnc0907092251015-n1.htm

【ローマ=渡辺浩生】主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)で、経済危機の克服に避けて通れない課題として、「グローバルインバランス」(世界的な経常収支の不履行)がクローズアップされている。世界経済は最大の経常赤字国である米国の過剰消費に支えられてきたが、今後も依存し続けることは困難であるとして、8日の首脳宣言には「不均衡是正にむけた協調」が明記された。ただ、中国の輸出主導の成長路線に修正を迫ることになるだけに、世界経済にとって新たな火種となる可能性も秘めている。


「中長期的な成長にはグローバル・インバランスの是正が必要だ。米国の過剰消費を抑制し、中国など新興国を内需主導に転換する必要がある」。8日の昼食会で、麻生太郎首相は不均衡問題の口火を切った。


米国は世界中の製品を飲み込んで輸入が超過した結果、世界最大の経常赤字を出し続けている。中国や産油国など経常黒字国は輸出で稼いだ外貨準備と貯蓄を米国に投資してきた。つまり、中国などがため込んだマネーを米国が過剰に使う不均衡な仕組みによって、過去20年あまり世界の成長を支えてきた。


だが一方で、米国に流入した潤沢な資金が住宅バブルの発生と現下の金融危機の温床になった。「世界は米国の貪欲(どんよく)な消費市場に慣れてしまった」とオバマ大統領自身が語る。8日の首脳宣言で「不均衡解消に向けた協調」が明記されたのは、「以前の成長モデルには戻れない」(関係筋)との危機感の表れにほかならない。


産経:金融危機の温床「グローバル・インバランス」解消で協調へ 2009.07.09
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090709/fnc0907092251015-n1.htm

FT:
首相が冒頭で指摘された財政出動の重要性についてお聞きします。一部の国家首脳は、ここでは特にドイツ首相を念頭においているのですが、「今はすべての国が金を使うべきではないし、国によっては支出が多すぎる」と問題提起しています。日本は財政出動を増やす責任があるとお考えですか? そして、具体的な数字は言えないでしょうが、日本がある程度の財政出動を実施すれば、日本経済の状態について諸外国を安心させられると思いますか?

麻生:日本のバブル経済が崩壊したのは1990年代初めのことです。あのとき、日本の6大都市で地価は87%も下落しました。当時の政府は金利引き下げに尽力し、実際に日本銀行は景気刺激策として金利をゼロ近くまで下げましたが、効果はなかった。なぜかというと、地価下落や資産価値下落で、多くの企業が倒産してしまったからです。その結果、企業は経営方針を利益の最大化から負債の最小化と転換せざるを得ませんでした。

日本企業は長い間、銀行融資の返済を最優先課題にしていたため、銀行から資金を借りて設備投資するわけにいきませんでした。ゼロ金利なのに融資を受けようとしない企業が設備投資をするなど、そんな発想の経済学の本など読んだこともありません。

企業がひたすら銀行に負債を返済していったおかげで金融機関に余った余剰資金を、日本政府が年間20兆円とか30兆円規模で借りていきました。そして経済状況が悪化する中、政府は財政出動の形でその借金を使っていったのです。おかげで1992年以来というもの、景気情勢は悪化しても、日本のGDPは500兆円を下回ったことがありません。

過去15年間の経験のおかげで、私たちはどういう対策が必要か承知しています。それに対してアメリカや欧州各国にとっては、今回のような経験は初めてかもしれない。財政出動の重要性を理解している国もあれば、理解していない国もあって、だからドイツは(財政出動に消極的な)発言をしているのだと思います。

また欧州にはマーストリヒト条約(欧州連合条約)があるわけで、英国は採択していない部分があるからこそできることがあるし、もしかしたら採択しているからこそドイツにはできないこともあるのかもしれません。


(翻訳・加藤祐子)


麻生総理・インタビュー記事/米ファイナンシャル・タイムズ:2009.3.31
http://news.goo.ne.jp/article/ft/politics/ft-20090401-01.html