「技の秘密はは…型の手順(テクニック)にではなく、身体にあります。」
いくら型(テクニック)を習っても身体が思う様に動かなかれば、技は掛かりません。とは言うものの型(テクニック)を習わなければ、どの様に動いて良いか分かりません。それ故に形のあるテクニックから習って行くのですが、型の中で示される動きを担保するのは、技の知識ではなく自分自身の身体のクオリティです。
例えば、柔術の稽古を進めて行く中で「チカラを抜いて動く」と言うのは避けて通れない命題ですが、これは本当に難しい事です。相手に掴まれると本能的に身体が緊張して、全ての動きにチカラが入ります。この本能的な反射(あるいは現代のストレス社会で身に付いた悪しき習慣なのでしょうか?)を克服してリラックスしないとダメなのです。
体験した者しか分からないと思いますが、稽古を重ねて理屈が分かって来ても身体が思う様に動かない苦しさ。効く技を掛ける為には身体の感覚が重要です。身体チカラ抜きの感覚は稽古の中で徐々に身に付けて行くしかありません。しかし1~2時間の稽古で掴んだ感覚は次の稽古の時に忘れている事も多いので、日常の中で出来る独り稽古を少し紹介したいと思います。
【最初にちょっとした実験です。】
①椅子に座りテーブルの上に500mℓのペットボトルを置いて、そのペットボトルを片手で持ち上げて、テーブルから10㌢程上方でキープ下さい。②次にペットボトルを持った側の肩のチカラを抜いて、肩を落として下さい。③肩が落ちた人は、肩に余分なチカラが入っています。④何故なら、肩を落としてもペットボトルを持ち続ける事が出来た筈です。
この実験を終えて「肩は始めから落ちていました」と言う人は「肩のチカラ抜き」が出来ていると言う事です。しかし多くの人は、ペットボトルを上に持ち上げると言う動きのプロセスの中で、肩の筋肉を緊張させると言う身体操作は「全く不要」にも関わらず、ペットボトルに狙いを定めた瞬間に肩が緊張して盛り上がります。その次に肘を差し出す位置を決めて、最後に肘から先の部分が動いてペットボトルを取りに行きます。コレは正にチカラ業と同じ動きのプロセスです。
さて、独り稽古の内容ですが、目の前のペットボトルを最小限のチカラで持ち上げる事です。指先から”そろり”と動き出して、ペットボトルを持ち上げる動きのプロセスの中で肩が緊張して持ち上がらない様に細心の注意を払いましょう。スピードはお好みで、しかし、速いよりユックリと練習した方が効果的です。
技を掛ける瞬間に”思わずチカラが入る”状態とペットボトルを取ろうとした瞬間に”思わず肩が上がる”状態は、心身の相似形。相似形であるが故にペットボトルを持ち上げる作業が感覚のトレーニングになる訳です。
尚、ペットボトルは中身が入っているモノを使って下さい。適度な重さがある方が良いかと思います。また、慣れて来たら、ペットボトルに替えて水を入れたグラスを使って練習しましょう。水は飲み口のギリギリまで入っている方が良いです。グラスを真っ直ぐ持ち上げないと水が溢れます。肩と肘が固まっているとグラスを垂直に持ち上げる事は出来ません。
以上が「独り稽古」の紹介ですが、ご興味のある方は是非、お試し下さい。八光流の教伝を受けた人でしたら、お気づきかと思いますが、ペットボトルを持ち上げる時の腕の動きは、初段の中で「あの技」と全く同じです。
(松ぼっくり)