「・・・だれ?」
怪我人の声で目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
誰?と言われて、どのように答えるのが正解なのだろう? 通りすがりのイケメン? 森に棲んでる隠遁者? 熊をも圧倒する猛獣の使い手?と考えていると・・・
「はっ!! なぜ裸なの?・・・まさかっ いたっ」
怪我人は体の上にかけてあった熊の毛皮に身を包んだが急に動いた為、怪我に響いたのだろう。それよりも考えているうちに変な誤解をされてしまったようだ。服を脱がせて全身を見たことは確かだけど・・・
「どうして、ここにいるの? 他の人は? なぜ裸なの?」
見た感じ危機的状態は過ぎたようだが、最初のだれ?は何処に飛んで行ったのかわからないが今の状況を知る為に矢継ぎ早に質問が飛んできた。
「答えて・・・」
怪我人は急に黙った。怪我の影響かと心配したが背後に殺気を感じるので振り返ると2匹が怖い顔をして怪我人を睨(にら)んでいた。
「うるさくて、ねむれなーい」「うるさいので食べていいですか?」
「うるさいのは、わかるけど食べちゃダメだよ」
2匹は気持ちよく眠ってる所を起こされたので不機嫌だった。
「えっ!!・・・食べる!?」
「食べられたりしないので安心してください。寝てる所を起こされて不機嫌なだけですよ」
怪我人は不安のようだ。
「まずは自己紹介するよ。俺は遊人、この森で暮らしてる隠遁者だ」
「えーー、ごしゅじんさまの名前、ゆうじんだったのーーー」
たまごが言った。そういえば俺の名前を言ってなかったかな?
「どのように書くのですか?」
あまいに聞かれる。
「遊人と書いて、ゆうじんと読むんだよ」
囲炉裏の灰に漢字を書いて2匹に教える。
「あそぶにん?」「あそびにん?」
「ゆうじんだーーーー」
2匹は嬉しそうに逃げていく。
「あのー 犬猫と話してる所、申し訳ありませんが・・・」
いつもは2匹以外いないので怪我人を忘れていた。
「ごめん ごめん、忘れてた。怪我をしている君を、この2匹が食べ物と間違えて持って帰ってきたから君はここにいるんだよ。食べ物ではないと教えたので食べられないから安心してね」
「大丈夫なんですか?」
「ご主人様が食べ物でないと言うので食べません」
「えっ!! 今、誰が喋ったのですか?」
「ん? この猫だけど? あまいと言うんだよ。あっちの犬は食いしん坊と言います」
「ちがーう たまごだよー」
怪我人は困惑しているみたいだ。
「この2匹には精神感応能力があって話せるんだよ」
「さすがは、神聖な森に住む動物ですね」
「おなかすいたー」「お腹が空きました」
怪我人の神聖な森と言う単語が気になったが、お腹が空いて怪我人を齧(かじ)られてはいけないので朝飯を作る事にした。
つづく