久々のさいたまスーパーアリーナ開催となったDREAM17を観戦して来ました。

青木選手、川尻選手、所選手、桜庭選手など、現時点で日本のMMAが用意出来るメンバーとしては、豪華なメンバーが揃った大会でしたが、お客さんの入りは満員とはいかなかった様子です。

これが厳しい現状でしょうか。

ただ、大会の内容は悪くなかったと思います。途中で中だるみしそうな展開もありましたが、特に大会の後半戦は充実していたと思います。

ミノワマンは予定調和のごとく一回戦で登場し、巨漢を相手に一本勝ち。毎度おなじみのパターンですが、これはこれで風物詩的に第一試合としては良いのではないかと思います。

バンタム級の一試合目はは少し退屈な試合になってしまいましたが、次の試合で今成選手が決めてくれました。

相手のカラム選手が寝技につきあってくれましたが、やはり今成選手の警戒心があって1R~2Rにかけては一本は取れませんでした。

3Rで今成選手が打撃を当てにいくと、それをカラム選手が嫌がったのか、テイクダウンを狙いにいきました。そこで少し隙が出来たのか、それまでは決まらなかった下からの腕十字が極まり、見事一本勝ちを収めました。

パンチから、寝技での一本につなげたところは、今成選手の進化の表れでしょうか。

一方でバンタム級JAPAN GPで今成選手と決勝戦で対戦し、勝利した所選手はバヌエロス選手に敗北を喫してしまいました。

個人的には大きな差はなかったので、一般認知度の高い所選手は貴重な存在ゆえ、僅差の判定勝ちを収めるかと思いましたが、逆の結果となりました。

大晦日大会の開催が既に決定している中で、所選手は主催者側としては残しておきたい存在かと思ったのですが、シビアな判定となりました。

新たなDREAMとしての決意の表れかもしれません。

一方、北岡選手VSシケリム選手の試合の判定も物議を呼びました。3R目のイエローカードは少し厳しいかなと思いましたが、判定は個人的には妥当かと思いました。

仕掛ける姿勢を見せていた北岡選手に対して、シケリム選手は消極的で、ローキック以外何もしていない印象でした。

実力者のシケリム選手から、泥臭くも勝利をものにした北岡選手の勝利を讃えたいと思います。

川尻選手はフェザー級に落としての初めての試合でしたが、強敵のハンセン選手から一本を奪っての勝利でした。

失礼ながら、川尻選手がハンセン選手を相手にライト級のときでも一本で勝てるイメージは無く、上になった状態をキープしての判定勝ち関の山かと思っていました。

多くの選手が階級を落としてしばらくは厳しい結果を強いられる中で、川尻選手のこの勝利は評価に値すると思います。

最後にメインの青木選手は、やはり別格の強さでした。今回は相手の強さのレベルが分かりにくかったので、青木選手の強さも分かりにくかったかもしれませんが、それでもあのような勝ち方が出来るのは世界トップレベルならではかと思います。

やはり世界のトップファイター達と凌ぎを削る青木選手が観たいと思ったとともに、DREAMの中では青木選手の実力だけ突出しているということを実感した大会でした。
ヒョードル選手が勝てません。

かつて日本のPRIDEというリングで、無類の強さを誇ったヒョードル選手。最近の戦績でヒョードル選手の実力を疑う声も挙がっていますが、それは結果論で、かつてのヒョードル選手はどうシミュレーションしても負ける姿が思い浮かばない程の強さを誇っていました。

無敗の選手や、絶対王者と呼ばれていた選手ほど、一度負けると連敗という負の連鎖に陥る傾向があります。勢いがあった分だけ転ぶのが激しいのか、それとも一度負けたこと自体が衰えなのか。

卵が先か鶏が先かというような話になりますが、絶対王者と呼ばれていたファイターの中でも別格と思われていたヒョードル選手でさえも、今の負の連鎖を断ち切れません。

これまでの2敗は、油断や体格差など、ある種ヒョードル選手を擁護するような意見も見られました。

ただし、今回のヘンダーソン選手との試合は、ヒョードル選手に体格的な有利さもありました。負の連鎖を断ち切るためといいますか、情状酌量の措置でヒョードル選手を勝たせるために組んだカードという見方もあると思います。

それでも負の連鎖は断ち切れませんでした。

最近の戦績から、ヒョードル選手を「並のファイターだった。」と評価する声が所々で見られますが、それは違うと思っています。

永遠に強さを維持出来るファイターなどいないですし、衰えというものはタイミングさえ違えど、どの選手にも来るものです。

ヒョードル選手が練習環境やマネージメントの影響もあり、MMAの進化についてこれなかったという、適応力に関する指摘もあります。

まだ競技としては歴史が浅く、発展途上のMMAの進化のスピードは速く、適応しきれなくなったのかもしれません。

一方で適性というのはどうでしょうか。どのスポーツでもあるように、その時々に主流となる"スタイル"というものがいくつか存在します。

ヒョードル選手がPRIDEで活躍していた頃に主流であったいくつかのスタイルは、ヒョードル選手にとって絶対的な強さを発揮出来た、適性のあるものだったのかもしれません。

リングとケージの違い、そして発展の早いMMAの進化は、今のMMAをヒョードル選手にとって別競技のようにしてしまっているのかもしれません。いくらチューニングしようと、適性のない状態で、競技の頂点に登り詰めるのは難しいものがあります。

適応力、適性、そして衰え。ヒョードル選手の現状を断定することは出来ませんが、これらのものが複雑に絡み合っているような気がします。

負の連鎖を断ち切りたいからこそ、勝ちに急ぎ、隙を作ってしまう。ヒョードル選手のファンとしては、この悪循環は観るに辛いものでしょう。

ヒョードル選手は引退するべきか否かが議論されていますが、私は本人が納得するまでやれば良いと思っています。

今回の試合ではレフリーのストップは妥当であったものの、ヒョードル選手自身は納得はしていない様子です。

今後のヒョードル選手の試合の予定は全く見えていませんが、せめて最後の試合は、勝つにせよ、負けるにせよ、本人の納得するかたちで終わらせてあげて欲しいというのが願いです。

メインの高谷選手VS宮田選手の熱戦。所選手VS今成選手の盛り上がりと、所選手の初タイトル。所選手VS今成選手に関しては煽りVのクオリティも上出来で、会場の空気作りには十分なものでした。

7月16日(土)に有明コロシアムで行われたDREAM JAPAN GPは、良い大会だったと思います。

それなにの、何か物足りなさを感じてしまったのは何故でしょうか。

既に巷では言われていますし、大多数の格闘技ファンはとっくの昔に実感していたことかもしれませんが、自身が日本発の格闘技興行に思い入れが強かったが故に、目を反らしてしまったいたのかもしれません。

今回のDREAMは、どんなに試合が盛り上がろうと、それが世界最高峰を決める場には繋がらないことを、猛烈に痛感してしまった大会でした。

もちろん青木真也選手など、頻繁に世界のトップと凌ぎを削るという意味でアメリカのUFCやストライクフォースを意識する発言をしていますし、今更何をと言われてしまうかもしれません。

ただ前回大会での新旧交代の失敗に続き、今大会で世界のトップとの果てしない距離の大きさのようなものを感じてしまいました。

ライトヘビー級のタイトルに挑んだ泉選手は、王者のムサシ選手にプロとアマ程の打撃のスキルの差を見せつけられ、良いところ無く完敗。

所選手VS今成選手のグランプリ決勝戦は、お互いのストーリーもあり盛り上がりましたし、所選手の良いところが出た試合でした。ただ所選手との試合でもそうであったように、今成選手の足関節狙い一辺倒のあのスタイルが次の世界トーナメントで通用するかは疑問符がつきます。(個人的に嫌いなスタイルではないのですが。。)

また、フェザー級のタイトルマッチでは、「試合内容に拘らなければUFCでも通用するのでは?」と期待されていた宮田選手が、王者の高谷選手に判定で敗れてしまいました。

高谷選手がタックルをきるのが巧かったというのと、試合がリングで行われブレイクも早かったというのもありますが、宮田選手は一度もまともに得意のタックルでテイクダウンを奪うことは出来ませんでした。

高谷選手のタックルをきる技術が世界でもトップレベルなのかもしれませんが、宮田選手が一度も得意のかたちでテイクダウンを奪えなかったというのは、厳しい現実だと思います。

PRIDE消滅から下降の一途をたどる日本のMMA界。サッカー界のように日本で活躍して、海外の舞台を主戦場として戦うという図式が固定化されつつあります。

日本MMA界の復興を祈りつつも、今は割り切って、日本で育ち世界へと羽ばたく、海外での日本人選手の活躍を応援する時期なのかもしれません。

現時点で世界での活躍の期待を背負っている日本人選手を3人挙げるとすれば、青木選手、日沖選手、そして今度リオデジャネイロでのタイトルマッチが決定している岡見選手でしょうか。

日本人選手が海外の舞台でもベルトを巻く姿を是非見たいものです。