ヒョードル選手が勝てません。

かつて日本のPRIDEというリングで、無類の強さを誇ったヒョードル選手。最近の戦績でヒョードル選手の実力を疑う声も挙がっていますが、それは結果論で、かつてのヒョードル選手はどうシミュレーションしても負ける姿が思い浮かばない程の強さを誇っていました。

無敗の選手や、絶対王者と呼ばれていた選手ほど、一度負けると連敗という負の連鎖に陥る傾向があります。勢いがあった分だけ転ぶのが激しいのか、それとも一度負けたこと自体が衰えなのか。

卵が先か鶏が先かというような話になりますが、絶対王者と呼ばれていたファイターの中でも別格と思われていたヒョードル選手でさえも、今の負の連鎖を断ち切れません。

これまでの2敗は、油断や体格差など、ある種ヒョードル選手を擁護するような意見も見られました。

ただし、今回のヘンダーソン選手との試合は、ヒョードル選手に体格的な有利さもありました。負の連鎖を断ち切るためといいますか、情状酌量の措置でヒョードル選手を勝たせるために組んだカードという見方もあると思います。

それでも負の連鎖は断ち切れませんでした。

最近の戦績から、ヒョードル選手を「並のファイターだった。」と評価する声が所々で見られますが、それは違うと思っています。

永遠に強さを維持出来るファイターなどいないですし、衰えというものはタイミングさえ違えど、どの選手にも来るものです。

ヒョードル選手が練習環境やマネージメントの影響もあり、MMAの進化についてこれなかったという、適応力に関する指摘もあります。

まだ競技としては歴史が浅く、発展途上のMMAの進化のスピードは速く、適応しきれなくなったのかもしれません。

一方で適性というのはどうでしょうか。どのスポーツでもあるように、その時々に主流となる"スタイル"というものがいくつか存在します。

ヒョードル選手がPRIDEで活躍していた頃に主流であったいくつかのスタイルは、ヒョードル選手にとって絶対的な強さを発揮出来た、適性のあるものだったのかもしれません。

リングとケージの違い、そして発展の早いMMAの進化は、今のMMAをヒョードル選手にとって別競技のようにしてしまっているのかもしれません。いくらチューニングしようと、適性のない状態で、競技の頂点に登り詰めるのは難しいものがあります。

適応力、適性、そして衰え。ヒョードル選手の現状を断定することは出来ませんが、これらのものが複雑に絡み合っているような気がします。

負の連鎖を断ち切りたいからこそ、勝ちに急ぎ、隙を作ってしまう。ヒョードル選手のファンとしては、この悪循環は観るに辛いものでしょう。

ヒョードル選手は引退するべきか否かが議論されていますが、私は本人が納得するまでやれば良いと思っています。

今回の試合ではレフリーのストップは妥当であったものの、ヒョードル選手自身は納得はしていない様子です。

今後のヒョードル選手の試合の予定は全く見えていませんが、せめて最後の試合は、勝つにせよ、負けるにせよ、本人の納得するかたちで終わらせてあげて欲しいというのが願いです。