この「渡良瀬渓谷鉄道」 という名前。
漢字や 言葉の音など どれをとっても
山々の合間を縫って走る 機関車を想像できる。
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初秋、渡良瀬渓谷鉄道の電車が行く。
ここは一人じめの貸切の無人駅「本宿」駅。
朝の光がさして
木立の間からやわらかい光が漏れている。
列車の時刻にあわせていたわけではないけれど
遠くから 電車の音が聞こえた。

それは 森の中から 現れた。
ガタンゴトンという線路の継ぎ目から奏でられる
独特の鉄の響きと
ウイーン というモーターの音が重なりやってきた。
次第に僕に近づき音はフォテシモになり まん前を通り過ぎた。
時間が一瞬止まる。
乗っている人たちが
こちらにむかって笑顔でしきりに手を振っている。
振り返す。
まもなく 電車は消え、我に返る。
あたりは何もなかったように
渡良瀬川のせせらぎの音だけになった。
少年の頃 鉄道の魅力に取り付かれる子は多い。
なぜだろう。
それは たくさんの貨物や人を乗せて
前に向いて、しっかりと引っ張って進むからだと思う。
駅という目的地にむかって堂々と行くからだと思う。
大人になると忘れてしまう気持ちだ。
