ギター②  by オヤカタマン

 

 われら焚火バンドのメインコンサートも12月22日をもって、ひとまずめでたく終了することが出来、さあこれからどうするだあ?と少々ロストの気分です。

そこで思いついたのが、2本のS yairiギターのメンテ作業。この2本のS yairi、3弦、4弦がどうも詰まる感がするのです。

 

その前に、S yairiさんについて少し紹介させていただきますね!

S yairiさんは矢入貞夫氏の創業で1970年頃から私らの目にチラホラ見かけるようになりましたね。

その時の印象として「えれぇ~高くねぇ?」の印象。なにせ1970年頃と言えば大卒初任給が40,000円程で、それを軽~く超えてしまうほど高価なもんなんです。ヒットシリーズのYDシリーズで60,000円から200,000円也!

「いったい誰様が買うのよ」が正直の気持ち。したがって一段御買い求めやすいYAMAHAさんに大分流れて行ったと思いますよ。当時のYAMAHAさんの最も手造りで高価なFG-180が18,000円です。実に3倍以上の開きがありましたからね。3倍ですよ!

 

貞夫氏は兄の矢入儀一(K yairiの創業者)さんと雁首並べて鈴木バイオリンさんに丁稚奉公、ギター作りのノウハウを吸収します。その後兄はyairiギターを設立。弟の貞夫さんは単身渡米してMARTIN社のギターを徹底的に調査研究をしてS yairiを立ち上げるわけです。

MARTINギターは今も昔も憧れのギターの一つ、けれどMARTIN D-18やD-28などは20万円以上しましたから、当時の学生や所帯持ちのギター愛好家には全く手が出せません。しかし高価と言えどもMARTINの3分の一や4分の一でMARTINそっくりさんのギターが買えるのならと人気を博したわけです。

このS yairi、MARTINにそっくりなだけで人気を博したわけではござらんで、1本1本手造りの丁寧さと音質にも評判が良かったんです。なにせ巷で人気があった井上陽水や谷村新司も愛用していたくらいですからね。

 

それから実に50年ぶり、50年ぶりですよ!私も憧れのS yairiギターを入手することが出来たんです。

新古のYDT-18とビンテージYD-302でございます!しかしこの話には落ちがあります。

私はS yairiさんが1983年頃?倒産をした記憶がありました。したがって新古のYDT-18を眺めててっきり復活したばかりと思いこんでしまい、早々購入してしまったわけです。まあ半値近くという話に釣られたのもあるんですけどね。

この個体、我ながら音質が良く気に入っていますので後悔はないのですが、ロゴマークは同じでもどうやら矢入貞夫氏のS yairiさんではないことが判明したわけです。

 

このYDT-18,オール単板で抜群の鳴り、低音は腹にどしんどしん響き、高音も透き通るような音を出します。

けれど調音が難しく3絃4弦がどうして詰まり感があるんですねぇ、そこで来る12月22日のコンサートに間に合うようにと今度こそと貞夫氏のYD-302の購入を決意したわけです。数多いYDシリーズでなぜ302を選んだのか、302は当時60,000円のグレード、グレードが1つ上がるごとに10,000円ずつ上がり、YD305では100,000円です(最高峰のYD308は200,000円)。

しかし流通しているS yairi30シリーズの中古価格は当時高額なYD306,307,308を除き、どのシリーズもほとんど変わらないのです。(YD306,YD307,YD308は販売された個体も少なくほとんど流通していません)

不思議ですねぇ。概ねこれらのシリーズは40,000~80,000円で手に入るわけですが、高額なものはYD-302でも100,000円をはるかに超えてしまうんです。これはもうYDシリーズでは302が一番出来がよろしいとの証だと考えたのですよ。

 

けれど私の手元に届いたYD-302もいざ調音をしてみると、1弦の僅かなビビりと4弦が詰まるのではないか!愕然とし笑っちゃいましたね。まぁ、実際に試し弾きができない悲しみですよ。

届いたYD-302は幾分準反り、ナットもなんか変なんです。YD30シリーズはロッドが内蔵されていて外部から調整が出来ない仕組みなので、その調整は私には完全に無理な話。まあこれはプロに任せるかということで、コンサート終了後入院させた次第なんです。

 

しかしYDT-18はなんとか自分でやってみようと決意!ダメでもプロに任せればいいとの甘い考えですね。

フレットは既に摺り合わせ済なので入念にネック調整、本来ならばネックがストレートであれば問題解消なはず、けれどやはり詰まる!これはナットかブリッジに問題があるなとの素人考えで、あれやこれやとまずはブリッジ調整をします。しかしこれでは解消できませんでした。そこで次にナットに狙いを定めます。けれどこれは少しばかり勇気がいるんです。なにせギター本体からナットを「エイッ、ヤー」とばりに打ち剥がします。実際はコンコンと力加減の微調整しながらだけどね。

弦楽器でのナットの良し悪しは非常に音質に響きます。まあ、消耗品なんですね。

新しいナットを同サイズに削り組み込みます。ボンドの量も詰まり音の原因になると、昔誰かに言われたことがあったので気をつけました。

装着後、軽ーく弦を張り一日ボンドを乾燥をさせます。

そして恐る恐る調弦し、ポロロ~ンと、「おっお~いいでねぇ~の!」弾けたように指でフレットを上げてゆきます。

聴き方によれば、僅かにこもると言えばこもる感じはするけど、はるかに以前よりはいい!合格点なんです。

やりましたねぇ。プロに頼めば5,000円前後はかかるので、その分は節約出来ましたね。

 

このYDT-18,YD-302との弾き比べて音質に感じたことがあるんです。

どちらも低音も響く、高音もきれいな音を出します。けれどYD-302と比較すると、同じ弦を使用していても歯切れが無いというかどことなくモワーンという感じでメリハリがないのです。綺麗な音なんですよ、けどね、、、失礼ながら白痴美人音というか、、本音です。

つまるところ、YD-302の鳴りの良さが浮き出てしまったということですかね。

YD-302はYDT-18と違いオール単版でなく、表面のみスプルースの単板なのです。それでも遜色なく鳴り、メリハリがあります。特に高音は明らかに差がありますね。YAMAHAさんの1966年製FG-180ライトグリーンラベルと比較しても、一段各上の音でFG-180が安っぽい音質に聞こえます。これが名器と言われる所以なのでしょうかね?

YD-302の音の良さが考えられる要素がもう一つあります。それは大量生産ではなく一台一台手造りによる細部の拘り、そして40年以上経過しているスプルース材の完全乾燥からかもしれませんね。実際のところ50年以上前のFG-180の合板であるけれど乾燥音の素晴らしさを知っていましたからね。それに近いんです。

乾燥音の素晴らしさは新しいギターでは逆立ちしてもまず創り出せない音なんです。乾燥することによりよりぬめり感の音がなくなりカラカラとした歯切れが良くなることは容易に想像でますからね。まぁ音質の表現とは難しいもんじゃ。

 

そんなわけで後はネックの手入れにオレンジオイルが無かったのでオリーブオイルを浸み込ませた布で拭きあげて

S yairi-YDT-18のメンテは終了です。1000円~2000円でネックに塗るメンテナンス用オレンジオイルが市販されていますが、オリーブオイルでも事足りるんですね!弦交換時にやってみるといいですよ。

あとは入院したYD-302が完全復調して戻ってくるのを待つばかりです。

 

が、楽器は奥が深い!探求し始めたらキリがないしお金もかかる。引きどころを考えなくっちゃ。

決して収集マニアではないけれど、バンジョーも一応欲しかった個体が手に入り、目下の目標はMARTINビンテージギターを手に入れることか、それでめでたく終了なんだけれど、これが一番の問題で、私にとってはなんたってべらぼうに高額なんじゃ。

MARTINはいつの時代も人気者で、D-18,D-28、D-35辺りが球数も多く高額であるけれど比較的入手しやすい人気の御三家。D-28はギターのスタンダード、Gibsonを除きどのブランドメーカーもまずはこれのコピーが市販されています。D-35はバックが3ピースで出来ていて、「D-28とは少し違うんだよ」と個性派好み。D-18は飾り気のない質素感丸出しでそれでいてよく見るとMARTINなんでござりまするよ。そして音はD-28よりもこれぞMARTIN!と言わしめる逸品。

私の狙いはこれぞMARTINの音と言われるD-18なんだけれど、少し安目のD-16も悪くはないしD-1も捨てがたい。来年はどれを狙うかを検討しなくてはならん。