ギター、リペアー(弦高調整)

 

最良のコンディションにするのを諦めていたギターがもう一本ありました。御年54歳の1966年製YAMAHA FG-180。

このギター、今では音質的には大したことないけれど、発売当時は日本で唯一の本格派のフォークギターということで超人気でしたね。私の音楽史(大したことないですが)のスタートもこのギターから始まり、まさに私の人生そのもなんです。

今まで私のプレーヤーコンディションで長きにわたり活躍してくれました。けれどこのギターも歳には勝てず、私の腹同様、年月をかかけて徐々にボディー下部の腹がふくらみ初め「もと起き」状態になりました。弦高がどんどん高くなりその都度サドルを削り調整をしてきたのですが、とうとうサドルでの調整も限界に達し弦高は12フレットで6mmと、全く弾きずらい事この上なしの状態になってしまったんです。

もと起きを直すのは不可能だと思い込んでいましたからね「とうとうこのギターもお倉かあ」と諦めて永久保存にしようと弦を緩めギターケースに入れしばらく仕舞っていたのですが。

 

それがS yairiさんのギターメンテをしている時、フッと気づいたことがあったんです!

もと起き自体は治せんが、弦高をさらに低くすることは「ブリッジを削っちゃえば何とかなるかもしれん!」と。

貧乏人根性ではないけれど「道具は使い切ってナンボ」の真骨頂ですかねぇ。

早速FG-180をひっぱり出しましたよ、思いついたら即行動が私の生き方なんです。だからメチャクチャ失敗もしましたね、けどその分考え方やスキルも上がったと我ながら思うので全く後悔はしていませんけど。

 

アルミの長尺スケールで先ずはナットの端からネック上にスケールを載せブリッジに当ててどの程度のもと起き状態かを現状把握します。この時ネックとフレットの現状も把握も出来ますよ。つまり各フレットとスケールが隙間なく最終フレットまで続いていれば良好なんですね。そうでないのはネックが反っているか捩れているかのどれかです。

私のネックは概ね良好かな?くらいとまずまず。けれど関心のブリッジが、、、なんとスケールがブリッジの中ほどの高さに当たるでないか!本来ならブリッジとネックの高さがそう変わらないのがベターなのだと思うけど。

 

「これは上手くないぞ」と思いながらも弦高の分を足しておおよその弦までの高さを予測しどの程度削ればよいか検討。ブリッジの上にはサドルが乗るわけでその高さ分も考慮しなくてはならん。、ふむふむ、理想は5mmかぁ。

けれど5mmも削ったらサドル自体が無くなってしまうのでねぇ~のとサドルの高さも測ると最低必要限度に残ることは残るが、もうギリギリ!これはリスクがありすぎると、2~3mm程削ることに決定!

しかしブリッジを削れば全て問題解消というわけではなく、ブリッジ上部は研磨されても、サドルの溝の底は削れていませんからサドルの高さがやたら目立つようになるだけで弦高は全く変わらんという訳。したがって溝の底も彫らねば「意味がねぇ」ということです。

そうやって初めてサドル全体が低くなり、その分弦高も低くなるわけですね。

 

先ずギター本体の保護のためブリッジ周辺をくまなくマスキングし、ブリッジの材質の調査から始めます。

正目から削らないと逆立ってしまいますからね。

ホビー用カンナで少し削ってみますが、かなり硬い木で木目から察すると恐らくはローズウッドではないかな?

カンナではブリッジ上部しか削れないことが分かり、粗目のサウンドペーパー(40番)を固めのスポンジブロックに巻き付け削ります。このやり方のが時間はかかるけどブリッジの複雑な形状に対処でき誠に都合がよろしいのです。

失敗したら復元に相当な出費を覚悟せにゃらんので恐る恐るでしたが、やり始めたら何処吹風でどんどん削っちゃいました。気をつけるのは均等に元の形状を残しながらヤスリをかけることかな。

 

2mmほど削ったとこで、サドル溝にも手をかけます。溝がある程度残っている方が変に型崩れせず深く削りやすいからです。けれどこの幅1mmチョットしかない溝をさらに深く削るには恐らく専用工具が必要で、おまけに硬い材質ときている。さてどうしようと思案して、私の場合はホビー用ドリルを使いました。ドリルを高速回転させながら溝に沿って行ったり来たりしながら徐々に削ります。慎重にさらに慎重にと。ここでの注意は削りすぎて直接ギターボディーに傷をつけないこと!と手振れにより溝を変形させないことですね。

 

頃合いを見て一旦ブリッジにサドルを戻し1~2本の弦を張り弦高チェック!「お~っいいでねぇ~の!」明らかに弦高が下がってるぞよ!12フレットで3,5mmほどになっている。やりましたねぇ、少し高めだけどこれなら問題なしだ。

6弦全部張り調弦して試し弾き。

「ふむ~っ実に弾きやすいではないか」、音質も何となく良くなった気がする。気のせいか?これで現役復帰もありえるな。改めて「乾燥音っていいなぁ」独り言です。

 

てなわけで作業はここでいったん休止、というのもサドル溝がどこまで掘れるかリスクが伴うことと、細部の調整は残っているものの概ねリペアーに成功したと思われたからです。後は細目のサンドペーパーで仕上げて綺麗に湿り気のある程度の柔らかい布でふき取り、ブリッジの塗装も削ってしまったのでオリーブオイルを塗っておきます。

決して完成ではないけれど(さらに削る予定)蘇ったYAMAHA FG-180,これからも楽しませてくれそうです。

 

リペアー後の感想。

弦高を低くするのにあたり素人考えですが、この「もと起き状態」自体をを完全に修復させることはギターを分解しても材がそのように変形してしまっているため不可能なのかなと思われます。私の場合サドルを限界まで削っていたのでサドル全体を低くするのには、さてどうするか、でした。

その案は2通り。

1つは薄いブリッジの作り直しで、すればサドルもある程度標準に近いものを再度使用でき都合がよいのですが、ブリッジを剥がし再接着させるのに匠の技術が必要と思われ素人の私では無理っぽい。かと言ってプロに頼めば相当な出費を覚悟せにゃらん。

2つ目は私が行ったブリッジを削りサドル溝を調整する方法で、このやり方は大して時間もかからず(4時間ほどで出来たくらいです)ボディーに余分なストレスを与えることなく確認しながら行えることがいいですね。

古いギターは必ずと言っていいほど大なり小なり「もと起き」していますよね?このやり方はお勧めです!

 

*ギターのもと起きとは

ネックに問題があるわけではなく、ブリッジから下のボディーが弦の張力により引っ張り出されて膨らみ、ブリッジ自体がその分高くなることで、さらにやがてその影響でネックの付け根からサンドホールにかけて沈み込んでしまいます(これはロッド調整では治りません)。したがって酷いのは弦高が驚くほど高くなってしまうことですね。

特に表面の材が単版ギターには顕著に表れやすいので、演奏しないときは弦を緩めておくことが大切ですよ。

 

                           oyakataman