人には
誰しも波があるのだ。
きっと、あなたにもあるはずだ。
だから
だからどうか
彼女を
波のために見捨てないで。
おねがい。
— 波 —
彼女の傷は、何もここ最近ついたものではない。
もう、私と会う何年も前から
ずっとずっと
人知れず増えてきたものだ。
彼女は、それを
ずっと隠して
でも、止めることも できずに
ずっと
刻みながら生きてきたのだ。
その経験のない私には、
止めることも
叱ることも
掛ける言葉すら、ないのだ。
嗚呼、こんなに近くにいながら
この掌の なんと無力なことか。
私の浅はかな経験を総動員したところで、
説教すらも
薄っぺらい紙切れ同然の重みしかないのだ。
彼女には波がある。
そして、私にも波がある。
私たちの波は
偶然にも、逆を打っている。
おかげで
どちらも、さほど強くはないのに
寄りかかることができたのだ。
息の抜ける場所にできたのだ。
私は、弱い。
弱い自分に屈するつもりはない。
そう思えるのは
彼女という場所があるからだ。
彼女の灯火が あたたかかったからだ。
おねがいします。
望みが薄いことは分かっています。
それでも私は、
ほんの1%でも可能性があるのならば
もがきたい。
彼女のためではない。
私のために もがきたい。
おねがいします。
彼女に、もう一度チャンスをください。
波に飲まれそうになっている今を、
乗り越えるチャンスをください。
私が
乗り越えられなくなるのだ。
波に
飲まれてしまいそうで怖いのだ。
眠れぬ夜が
またやってくるのが怖いのだ。
おねがいします。
おねがいします。
彼女を 私から消さないでください。