月の見えない窓を見ていた。
珍しくしおらしいですね。
と、誰かが言った。
珍しいの。
と、わたしは応えた。
もっと喚きちらすと思っていました。
と、返ってきた。
そう。
と、わたしは応えた。
喚くもなにも、
今のわたしはからっぽだ。
なにもないから、
喚きようがなかった。
喚いてくれた方が、まだ、楽でした。
と、誰かがつぶやいた。
ごめんなさい。
と、わたしは応えた。
あぁ、わたしは今
この誰かを苦しめているのだな
と、思った。
月は、見えない。
女を壊してしまった男と、
からっぽになった女のおはなし。
はらはらと
落つる花火の
残り火が
涙のやうで
あきを迎ゆる
夏の終わりを告げる花火は、
なんとも後味寂しいものがあります。
「切ない」の一言では言い表せない、少し複雑な寂しさ。
打ち上げ花火も打ち終わり 、散った火花がはらはらと消える。
陽炎のような煙もやがてなくなり、
空がまた紺色に戻っていく。
もう、飽きるほど泣いたのです。
落つる花火の
残り火が
涙のやうで
あきを迎ゆる
夏の終わりを告げる花火は、
なんとも後味寂しいものがあります。
「切ない」の一言では言い表せない、少し複雑な寂しさ。
打ち上げ花火も打ち終わり 、散った火花がはらはらと消える。
陽炎のような煙もやがてなくなり、
空がまた紺色に戻っていく。
もう、飽きるほど泣いたのです。
「うぇぇ、じいちゃん、じいちゃぁあん」
「やだよぉう、よっこを連れていかないでぇ~」
『たましいは海の果て』
精霊流しで精霊船を海へ流すとき
わずか4歳だったわたしの妹は
海へと足を滑らせ
そのまま帰らぬ人となった。
蝉の声が聞こえ初めてしばらく経つ。
前期科目のレポートも終わり、
大学生は約2ヶ月間の仮フリーター期間に入った。
「りっこ、帰ろ~」
ラクロス部の練習からの帰路
わたしと文香は、あまりの暑さにちょっと寄り道をした。
「ん~、おいしっ♪」
駅ビルのアイスクリームショップは、夏休みとあって大繁盛している。
やっと空席を見つけ、二人で座った。
「りっこはいつから帰るの?実家」
「ん~、どうなるかなぁ…。今バイトの休み申請してるとこ。文香は?」
「ぶっちゃけ、帰るかどうか迷ってて。彼氏がさー…」
こんな具合に、友人たちの中にはお盆に帰省しない人もちらほら。
「まぁ、長崎人はね。やっぱ帰んないとね」
「あ、そっか!りっこは精霊流しあるもんねー」
「そーそー」
「お土産は爆竹?(笑)」
「いや、多分もう買ってると思う(笑)」
あはは、と笑いながら、わたしはまた10年以上前のお盆を思い出していた。
次の日、わたしはイヤにはっきりとした夢を見た。
「お姉ちゃん!コッチ見て、コッチ!」
「ちょっと!よっこ危ない」
「ホラぁ、ふよふよさぁん」
昼間、わたしとよっこが見ていた図鑑には
クラゲが載っていた。
その図鑑と同じ「ふよふよ」が、波に揺られていたのだ。
海を覗き込むわたしたちを心配して、お母さんが来た。
「律子、依子、危ないからこっち来なさい」
「「はぁい」」
ズルッ
「あっ」
「…えっ」
ドパーン…
「依子!!!」
朝、目が覚めると
シャツどころか、枕もシーツもぐっしょりと湿っていた。
「…洗わなきゃ」
どうせ、今日は天気がいい。すぐ乾く。
洗濯機を回しながら、未だにあんな夢を見る事実に
ため息を吐いた。
【お盆の期間中は川や海で遊んではいけない】
幼い頃、こんなことを親に言われた人は多いと思う。
【お盆に帰ってきたご先祖の霊が、水を伝って
その人の霊をあの世へ連れて行ってしまうから】
確か、こんな理由だったハズ。
それを信じ込んでいたわたしは、
8月15日に海で死んだ妹の葬式で
妹の死をじいちゃんのせいにした。
その年は、じいちゃんの初盆だった。
ひらがなを読めるようになったわたしは
それを自慢しようと、妹に図鑑を読んで聞かせた。
もちろん、すらすらとなんて読めない。
とぎれとぎれ、カタコトに近いわたしの音読を、
妹は「これは?じゃあこれは?」と夢中になって聞いていた。
わたしたち二人が、特に気に入ったのは
夜の海でキラキラと光るクラゲだった。
妹は、わたしに「ふよふよさん」を見せてくれようとしたのだ。
本当は信じ込んでなんかいなかった。
…いや、子供心に、ちょっと怖いと思っていたのは本当だけど。
「妹はわたしにクラゲを見せようとして死んだ」
この事実から逃げるために、じいちゃんに罪をなすりつけたのだ。
「…よっこ、じいちゃん、ごめんなさい」
今年もわたしは、船を見送りに帰郷する。
「やだよぉう、よっこを連れていかないでぇ~」
『たましいは海の果て』
精霊流しで精霊船を海へ流すとき
わずか4歳だったわたしの妹は
海へと足を滑らせ
そのまま帰らぬ人となった。
蝉の声が聞こえ初めてしばらく経つ。
前期科目のレポートも終わり、
大学生は約2ヶ月間の仮フリーター期間に入った。
「りっこ、帰ろ~」
ラクロス部の練習からの帰路
わたしと文香は、あまりの暑さにちょっと寄り道をした。
「ん~、おいしっ♪」
駅ビルのアイスクリームショップは、夏休みとあって大繁盛している。
やっと空席を見つけ、二人で座った。
「りっこはいつから帰るの?実家」
「ん~、どうなるかなぁ…。今バイトの休み申請してるとこ。文香は?」
「ぶっちゃけ、帰るかどうか迷ってて。彼氏がさー…」
こんな具合に、友人たちの中にはお盆に帰省しない人もちらほら。
「まぁ、長崎人はね。やっぱ帰んないとね」
「あ、そっか!りっこは精霊流しあるもんねー」
「そーそー」
「お土産は爆竹?(笑)」
「いや、多分もう買ってると思う(笑)」
あはは、と笑いながら、わたしはまた10年以上前のお盆を思い出していた。
次の日、わたしはイヤにはっきりとした夢を見た。
「お姉ちゃん!コッチ見て、コッチ!」
「ちょっと!よっこ危ない」
「ホラぁ、ふよふよさぁん」
昼間、わたしとよっこが見ていた図鑑には
クラゲが載っていた。
その図鑑と同じ「ふよふよ」が、波に揺られていたのだ。
海を覗き込むわたしたちを心配して、お母さんが来た。
「律子、依子、危ないからこっち来なさい」
「「はぁい」」
ズルッ
「あっ」
「…えっ」
ドパーン…
「依子!!!」
朝、目が覚めると
シャツどころか、枕もシーツもぐっしょりと湿っていた。
「…洗わなきゃ」
どうせ、今日は天気がいい。すぐ乾く。
洗濯機を回しながら、未だにあんな夢を見る事実に
ため息を吐いた。
【お盆の期間中は川や海で遊んではいけない】
幼い頃、こんなことを親に言われた人は多いと思う。
【お盆に帰ってきたご先祖の霊が、水を伝って
その人の霊をあの世へ連れて行ってしまうから】
確か、こんな理由だったハズ。
それを信じ込んでいたわたしは、
8月15日に海で死んだ妹の葬式で
妹の死をじいちゃんのせいにした。
その年は、じいちゃんの初盆だった。
ひらがなを読めるようになったわたしは
それを自慢しようと、妹に図鑑を読んで聞かせた。
もちろん、すらすらとなんて読めない。
とぎれとぎれ、カタコトに近いわたしの音読を、
妹は「これは?じゃあこれは?」と夢中になって聞いていた。
わたしたち二人が、特に気に入ったのは
夜の海でキラキラと光るクラゲだった。
妹は、わたしに「ふよふよさん」を見せてくれようとしたのだ。
本当は信じ込んでなんかいなかった。
…いや、子供心に、ちょっと怖いと思っていたのは本当だけど。
「妹はわたしにクラゲを見せようとして死んだ」
この事実から逃げるために、じいちゃんに罪をなすりつけたのだ。
「…よっこ、じいちゃん、ごめんなさい」
今年もわたしは、船を見送りに帰郷する。
「もっと他に言うべきことがあるだろうが」
「それが分からないからお聞きしています」
「お前、ほんっと大嫌い」
「はい、存じてます」
最初は、誰よりも尊敬していたはずでした。
「それが分からないからお聞きしています」
「お前、ほんっと大嫌い」
「はい、存じてます」
最初は、誰よりも尊敬していたはずでした。
たとえその時がきても
わたしはきっと 動けない
いずれその時がきても
わたしはきっと 何もできない
踏み出せない
なのに
「その時」を
いとも簡単につくってしまう
浅はかな頭脳
お世辞にも威張れない 頭脳
何もできない
何も言えない
指一本 動かせはしない
あの日 あの時の自分を
呪いたいのか
褒めたいのか分からない
恨めしいのか
羨ましいのかも分からない
ただただ あの日が
脳内をよぎる
自分から○○る勇気もない癖に
大層な口を 叩くな。
わたしはきっと 動けない
いずれその時がきても
わたしはきっと 何もできない
踏み出せない
なのに
「その時」を
いとも簡単につくってしまう
浅はかな頭脳
お世辞にも威張れない 頭脳
何もできない
何も言えない
指一本 動かせはしない
あの日 あの時の自分を
呪いたいのか
褒めたいのか分からない
恨めしいのか
羨ましいのかも分からない
ただただ あの日が
脳内をよぎる
自分から○○る勇気もない癖に
大層な口を 叩くな。







