大人達の探索の声があばら屋の向こうへ消えていった。
「行ったみたいだよ」
振り返って声をかけると、そう、とセリが小声で答えた。
セリは全体的に色素が薄い人型の妖怪。
雄雌どっち? って聞いたら、どっちでもない、って答えていた。
「壮太(そうた)は、俺を匿って何か得をするのか?」
「別に。どうもないよ」
「なら、俺を捜索している人間達に知らせればいい。俺を匿っている事実を知られれば、お前が罰せられる」
「得はしないけど、セリが捕まるのは嫌。捕まったら殺されるんだろ? セリの処刑なんて見たくない」
セリはきょとんとした後に、顔をゆがませるように笑った。
「セリ」
「何?」
「せっかくきれいなんだから、どうせならきれいに笑ってよ」
セリはまたきょとんとして、クスクスと声を出して笑った。
「変な子ども」
「セリと対等に話せている時点で自覚しているよ」
「本当に、変な人間の子ども」
セリはひとしきり笑った後、俺をまっすぐ見て、ふわりときれいに笑った。
「でも、ありがとう」
それに俺は満足する。
やっぱりきれいなものは失いたくないな。






