上本は”代役”なんかじゃない | 明日通信

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昨夜のカープ応援スタンド(ケーブルテレビより)

 

 負傷が癒え佐藤に替わって一軍に戻ってきた上本。そのタイミングで末包が負傷、欠場、登録抹消になり、“代役”の形でレフトを守り、3番打者を任された。少なくともそんな言い方をしたニュースや解説を目にし耳にした。

 

 僕はその表現に承服しかねた。カープの選手の中で「野球をよく知っていて、どんな場面であれ役割を心得、こなす」のは上本。

 ただ、3連覇の時代、非力でチャンスもなかなか与えられなかった。しかし「お兄ちゃん(タイガースの元選手)より上」と僕はまわりに言ってたのだがなかなか恵まれなかった。4年前、5年前かね、代打に出てライトへサヨナラヒットし涙を流したことがあった。「これからチャンスに使われるぞ、変るぞ」と言ったのだが、あれをきっかけに一軍に残り代打や守備固めの出場が多くなり、力を発揮し始めた。

 

 本人の意識も変わったのかな、一月の広島・三原での自主トレでパワーもつけホームランも記録するようになったが、何より野球をよく心得たユーティリティープレーヤーとしての技を開花させたことだ。守備は内外野どこでも。打撃も何番を任されても前にランナーがおればひとつ前へ進めるため自分を犠牲にし、なおかつ後ろの打者へつなぐために球を弾き返す方向や飛び方まで工夫する。縁の下の“役者”で主役になろうとしないのが上本だ。

 

 昨夜の1回裏、粘って高橋のアウトコースへ沈む球を巻き込むようなバットスイングし内野の頭越しにレフト線へ落とし先取点を奪い取った。5回はサード村上の右を抜くツーベース。ここぞのタイミングを読んでの強振だった。「自分で決めよう」ではなく、ゲームを有利に進めるための攻め方を考えてのバットスイングだったと思う。

 

 カープは得点力が低い。選手個々、決めようとの意識が却ってゲームの有利な流れを断ち切ってしまっている。上本は「決めよう」ではなく「つなごう」が流れを止めず、得点につながる状況をつくりだしているということ。

 

 上本は“代役”ではない。優れた“役者兼演出家”だね。9人枠の何番、どこを任せるかでしぶとく、面白いカープの野球ができると思うね。