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 「言に匪ずんば言うなかれ、由に……」―詩経

   (守屋洋著「中國古典 一日一言」より PHP文庫)

 

 ・匪言勿言、匪由勿語

        (言に匪ずんば言うなかれ、由に匪ずんば語るなかれ=げんにあらずんばいうなかれ、ゆう

          にあらずんばかたるなかれ)

 

 『詩経』ある「賓之初筵(ひんししょえん)」と題する詩の一節。言うべきでないことは言うな、理由のないことはみだりに口にするな、という意味。酒の席の乱れを戒めたことばだという。

 誰でも、つい調子に乗って、言ってはならないことをちょろりと漏らし、相手の心をいたく傷つける、そういった経験をもっているにちがいない。そんなケースがもっとも多く出るのが、酒の席である。酔いにかられて不用意な一言を吐いたばかりに、喧嘩口論、はては刃傷沙汰(にんじょうざた)に及ぶ例もまれではない。

 中國には、「酒後吐真言」という俚諺(りげん)がある。酔うと本音が出るという意味だ。だからかれらは酒の席でもきわめて慎重で、めったなことを口にしない。その点、日本では、少しぐらい口をすべらしても、「酒の上のことだから」と大目に見てもらえる。だが、ものごとには限度がある。酒の上でも口を慎むのが賢明な処世というものだ。(原文ママ)