少し不足の文章 | 明日通信

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■製品紹介はパーフェクトに説明する文(記事)よりいくつか「説明が足りない文」がベター


 今は一般紙でも経済面で、経済や市場の動きなどと共にメーカーが開発販売する新製品を紹介する記事が多くなった。僕が取り組んできたモノづくりの専門紙は海外版も含め技術、開発、生産動向と共に次々開発され、市場に出される商品の紹介にも力を入れていた。

 若い記者は入社時からこの製品記事を書くことでメーカー、製品の開発目的、製品の構造、機能、性能、技術、デザイン、価格、市場性(可能性)などを感じたり学びながら文字による表現力を鍛えられる。

 字数制限なしと600字など制限ありの文章を試すのだが、最初は10人中7、8人が読者へ発信(知らせ説明)する記事であることを忘れ、与えられたパンフレットや資料から製品を忠実に再現することに傾注している。

 この点を指摘しながら読者の目線で分かりやすく、簡潔にとアドバイスし書き直させると、さすが記者志望だけあって文章が記事らしくなってくる。中にはよく商品の特性を捉え、商品や技術に詳しくない読者に(中には専門家以上の人も)やさしく説明し驚かされる新米記者も時にいる。

 しかしこのまま説明が言い足りた、わかりやすい記事は記事として評価するが、効果性(読者のレスポンス)を上げるため1、2カ所修正したり文をカットするというと不思議な顔をされる。

 「なぜ」となるのだが、理由はこうだ。

 例えば、家具を紹介するのに材質や構造、色彩、サイズを製品写真と共に載せる。パーフェクトに紹介すると読者(購買希望者)は紹介品が全てと判断し「色や材質、形はいいのにサイズが、うちの部屋では大きすぎて合わない」とあきらめてしまう。仮に色をチャコール他とかサイズを種々など省略すると「この色、こんなサイズはあるのか」と問い合わせや展示場へ足を運ぶ動機をつくることになる。

 つまり「パーフェクトに言い足りた文」より「少しいい足りず、ここのところが書いていないので知りたいな」という文が読み手を引きつけるということだ。

 「不親切」といわれるかもしれない。事実、ちょっと失礼は否めないが、発信する文は応答(反響)があって目的が達せられる。


 文を上手に書けないなんて悲観することなんてない。いい足りない文こそ、相手は首をひねりながら一字一字読んでくれる。