これまでアシナガバチを100群以上レスキューして、有機農業をしているはしもと農園や私の自然農の家庭菜園、そして工房に移住させてきました。特に工房では窓に設置して、生活を覗けるようにしているので、実にさまざまな習性を知ることができました。意外だったのは、とても短い狩りの期間です。

 


 

 

山形の場合は、母蜂が冬眠から目覚め、巣を作り産卵するのは4月末。そこから2ヶ月間母蜂一匹で子供達のために狩りをします。4〜6月にこの母蜂がイモムシを狩るのはいささかです。おそらく一日数匹でしょう。

6月末になると、いよいよ働き蜂たちが生まれます。しかし、まだすぐには狩りに出かけず、母の獲ってきた肉だんごの肉汁を待っています。彼女たちが狩りに出るようになるのは7月に入ってからです。

 

すると母蜂は、いよいよたくさん産卵するようになり、働き蜂の数も巣を埋め尽くすほど増えます。そして狩りも盛んに行われます。ピークの8月上旬には、緑や茶色、クリーム色の肉だんごを、5分に一度はくわえて戻ってくるように感じます。少なく見積もっても一日で50匹以上、もしかしたら100匹近く狩ってくるかもしれません。(今年は1時間だけでも張り付いて正確な数を確認してみます)

 

 

毎年、友人のはしもと農園には15〜20群移住させています。弱小群もいますが、それでも一日で500匹とか、もしかしたら1000匹近く狩っているかもしれません。もちろん、畑だけでなく行動半径100m内の自然に棲むイモムシも含めてということになりますので、どれだけ畑に貢献しているかはわかりません。しかし、その数を思うと逆にイモムシは足りているのかと心配になってしまいます。

 

 

しかし、8月末にもなると、肉だんごを集める数は極端に減ってしまいます。9〜10月は、巣にたくさんの蜂がいるのに全く狩りをしなくなるのです。

 

理由は、肉を食べる子供たちがいなくなるからです。母蜂も働き蜂も死に、巣にはオスバチと来年の母蜂たちの家族となります。越冬するまでの2ヶ月間、交尾や蜜を飲みに出かける以外は何もせず、巣にじっとしているのです。指先で触っても逃げるばかりでけっして刺してはきません。

 

 越冬までじっとして過ごします。

 

 

 触れます。

 

では、なぜそんなに早く子育てを終えるかというと、天敵のヒメスズメバチが猛威を振るうのが9月なので、その前に来年の母蜂を育てあげることが必要なのです。ヒメスズメバチは成虫は襲いません。襲うのは子供達です。

 

9月のキアシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチ。成虫を蹴散らしますがかみ殺したりはしません。子供がいないとわかると飛び去りました。


ということは、せっかく移住させてもアシナガバチがたくさんのイモムシを狩るのは実質7〜8月だけということになります。とても残念に思いました。

 

ところが昨年の6月、あることに気づきました。駆除依頼のお宅や周辺に10群の営巣をしていたのです。ほかにもお二人のお宅でも同じようなパターンを見つけました。昨年生まれた姉妹の母蜂たちの巣です。ただ、なかには母蜂の戻ってこない新しい巣もたくさんありました。冬越しやこの季節にほとんどの母蜂は、鳥に食べられたり、蜘蛛の巣にひっかかったり、雨に打たれたり、車にぶつかったりして命を落とします。なかには、巣は作っても卵を産めない蜂もいました。巣そのものも、強い雨で流されたり、カラスが持ち去ったり、人間に殺虫剤をかけられたりします。一つの巣から20〜30匹母蜂が生まれたとしても、家族を作れる母蜂は平均 1 匹なのです。

 

とはいえ、5〜6月は母蜂たちがまだたくさんいて狩りをしていることは事実です。はしもと農園でも少なく見積もっても100匹以上の母蜂たちが周辺に巣を作り、毎日狩りをしていることになります。ほとんどの母蜂たちがいずれ命を落としても、まもなく7月に家族を作れた働き蜂たちの活躍につながります。

 

 はしもと農園においた巣箱。迷わないようカラフルにしています。

 

以上、現場に張り付いて観察したわけではないので、確実なことはわかりませんが、畑にアシナガバチを移住させて、畑周辺に繁殖させれば、山形では5〜8月までのおよそ4ヶ月間は効果があるのではと推測しています。

 

昨年のはしもと農園代表の橋本氏によると、やはり夏は被害が少なく、秋から被害が増えたと言っていました。

 

完全に被害がなくならないのはヨトウムシ(夜盗虫)のように、昼間は地面に隠れていて、夜になると活動を始めるイモムシがいるからです。はしもと農園では、虫除けになるコンパニオンプランツのマリーゴールドも作物と一緒に植えて対策しています。
 


ヨトウムシ
 

そんなイモムシがいることに愕然としてしまいましたが、習性を調べると5〜6月の幼齢期は昼でも葉を食べているのだそうです。ということは、母蜂たちの活躍は、夏の被害を抑える大切な働きになっていることになります。

それにしても、アシナガバチが狩りをしない秋や、夜に頑張っているイモムシたちのことを思うと敵もさる者です。
「まあ、ちょうどいいかも」と思ってしまいます。

 

 

アシナガバチを畑に移住させる方法↓

 

移設巣箱の作り方↓

 

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