第11回|NSR250Rのカセットミッションを徹底解説②

<1~6速を生み出す仕組み>

 

こんにちは、A-side設計エンジニアのかねひらです。
9月といえば私の大好きな梨の出荷が最盛期となる時期だそうです🍏
毎年ふるさと納税で梨を頼むのですが、今年もそろそろ届くはずで毎日そわそわしています🫨
ちなみに梨は普段食べているところは茎で、本当の果実は中の酸っぱい芯の部分だそうですよ😮💦


さて、今回は「Revival NSR250R MC28復活プロジェクト」第11回です。
前回は、NSR250Rの特徴であるカセットミッションについて紹介しました💡
MC18、MC21、MC28と進化するにつれてギア比がどのように変化したのかも比較しましたが、今回はさらにミッションの内部へ入っていきます。
今回のテーマは、
「そもそも、どうやって1速~6速にギアを切り替えているの?」
です!
ミッションを分解してみると、たくさんのギアやシャフト、シフトフォーク、シフトドラムなどが組み合わされています⚙️
一見すると複雑ですが、それぞれの部品の役割を理解すると、変速の仕組みが見えてきます👀
今回は、

  1. シフトフォーク

  2. シフトドラム

  3. シフトドラムセンター

  4. ドグ

の順番で、それぞれの役割を説明した後、1速~6速で各部品がどのような位置になるのかをイラストで見ていきたいと思います!

 

 

 


 

 ◇ギアを動かす「シフトフォーク」

 


最初に紹介するのは、シフトフォークです。
MC28のミッションには、3本のシフトフォークが使われています。

 

パーツリストでは、

  • R.ギヤーシフトフォーク

  • センターギヤーシフトフォーク

  • L.ギヤーシフトフォーク

の3種類として記載されています✏️
 
シフトフォークの役割を簡単に言えば、
「ミッションのギアを軸方向に動かす部品」
です⚙️↔️
シフトフォークの先端は、ミッションギアに設けられた溝に入り込んでいます。
そのためシフトフォークが左右に動くと、ギアも一緒にシャフトの軸方向へ移動します。

 

ただし、ここで重要なのが、
シフトフォーク自身が勝手に動いているわけではない
ということです☝️
シフトフォークを制御しているのが、次に紹介するシフトドラムです。


 

 ◇シフトフォークを動かす「シフトドラム」

 

 

 


シフトドラムは、円筒状をした部品です。
外周を見ると複雑な溝が加工されています👀
この溝が、変速の仕組みを理解する上で非常に重要です!
シフトフォークにはピンが設けられており、そのピンがシフトドラムの溝に入り込んでいます。

 

この状態でシフトドラムが回転すると、
シフトドラムの溝に沿ってシフトフォークのピンが移動する
ことになります。
するとシフトフォークも軸方向に動き、ミッションギアを移動させます。
つまり、
シフトドラムが回転する

シフトフォークが移動する

ギアが移動する
という仕組みです💡


 

 ◇シフトドラムは「変速プログラム」

 


シフトドラムの溝をよく見ると、単純な円周方向の溝ではありません🙅‍♂️
複数の溝が複雑な軌跡を描いています。
溝を平面化するとこのようになります。 ※L,C,Rは対応するシフトフォークです

 

これは、それぞれのシフトフォークを「どのタイミングで、どの位置まで動かすか」を決めるためです☝️
言い換えれば、シフトドラムは、
機械式の変速プログラム
のようなものです💾
シフトペダルを1回操作するとシフトドラムが所定の角度だけ回転し、その角度に応じて3本のシフトフォークが決められた位置へ移動します。
そして、その結果として1速、2速、3速……という各ギアポジションが作られます。


 

 ◇ギアポジションを決める「シフトドラムセンター」

 


では、“所定の角度だけ回転”はどうやって決まっているのでしょうか?
その回転角度を決めているのがシフトドラムセンターです。

 

シフトチェンジをすると、ギヤーシフトスピンドルが回転し、ギヤーシフトスピンドルのツメがシフトドラムセンターのピンに引っ掛かることでシフトドラムが回されます。

 
 

そして、ドラムストッパーがシフトドラムセンターの谷に嵌ることでポジションが固定されます。

 

 


 

 ◇そして「ドグ」でギアが噛み合う

 


ここまでで、どうやってシフトドラムが回り、シフトフォークが動かされてギアが移動しているのかが分かりました👌
では、ギアが移動した後、どうやって動力を伝えるのでしょうか?
そこで登場するのが、
ドグ
です!

 

ミッションのギアには、周方向に突起状の「ドグ」が設けられています。
いわゆる「ドグミッション」ってやつですね!
シンクロメッシュのような回転数を合わせるシンクロ機構がなく、ダイレクトにギアを繋げるミッションです💡
ちなみに英語では”DOG”と書くので「ドッグ」が正しいとかどうとか・・・
ここでは日本で定着している「ドグ」と記載します🖋️

このドグ同士を噛み合わせることで、回転しているギア同士を機械的に結合します。また、ドグ同士だけではなくドグと穴の噛み合わせもあります。
 

 


ここからがポイントです❗💡
ミッションのギアは、基本的に常時どこかと噛み合った状態で回転しています。
そのため、動力を伝えていないギアも止まっているわけではありません。
シフトフォークによってギアを軸方向へ移動させ、
必要なドグを噛み合わせることで、そのギアを伝達するギアと結合する
という仕組みです。

 
 

 

この構造によって、回転中でも素早くギアを切り替えることができます。


 

 ◇変速の流れを整理

 


ここまでの内容をまとめると、NSR250Rの変速は次のような流れになっています。
①   シフトペダルを操作
ライダーがシフトペダルを操作します。

②   ギヤーシフトスピンドルが回転
シフトロッド、チェンジアームを経由してギヤーシフトスピンドルが回転します。

③   シフトドラムセンターが回転
ギヤーシフトスピンドルのツメがシフトドラムセンターのピンに掛かり回転します。

④   シフトドラムが回転
シフトドラムセンターと直結されたシフトドラムが所定の角度だけ回転します。

⑤   シフトフォークが移動
シフトドラムの溝に沿って、3本のシフトフォークがそれぞれ決められた位置へ移動します。

⑥   ギアが軸方向へ移動
シフトフォークによってギアが移動します。

⑦   ドグが噛み合う
必要なドグが噛み合い、動力を伝えるギアが決定。
これによって、1速~6速の各ギアポジションが成立します🙆‍♀️


 

 ◇では、実際に1速に入れるとどうなる?

 


ここからが今回の本題です!

 

同じミッション内部でも、シフトドラムの位置が変わることでシフトフォークの位置が変わり、さらにギアとドグの状態も変化します📈
 
そこで今回は、モデル化したMC28のミッションの3Dデータを使用し、
1速 → ニュートラル → 2速 → 3速 → 4速 → 5速 → 6速
の順番で、それぞれの状態をイラスト化します。
また、シフトドラムの溝位置を分かりやすく同列に並べて解説します🫡


1速

 

1速では、シフトフォークはシフトドラムの溝の一番端の位置にあります。
シフトフォークはL,C,Rそれぞれ、溝の左・中・右の3ポジションを移動します。
左ポジは左側のギア、右ポジは右側のギアと噛合い、中ポジはどちらのギアとも噛み合わないので空転する仕組みです。
1速の場合、上の絵でいうと、Lは中、Cも中、Rが右のポジションです。
この位置だとRのシフトフォークで動かされた5thギアが隣の1stギア(37T)とドグで噛合い、カウンターシャフトが回転します。この時、5thギアの歯数は回転に影響しません。
減速比は37T/13T=2.846になります。
この状態では、エンジンの回転を大きく減速して、後輪へ大きなトルクを伝えます。


N(ニュートラル)

 

1速から軽めにシフトペダルを操作すると、ニュートラルに入ります。
ニュートラルでは3つのフォークは全てセンターにあり、どのギアとも噛み合わない位置になります。これにより動力が伝達されず、ただギアは空転しているだけの状態 = ニュートラルになります。


2速

 

さらにシフトペダルを操作すると、シフトドラムが次の位置へ回転します。
それに合わせてシフトフォークが移動。
L=左、C=中、R=中のポジションです。
1速で噛み合っていたドグが解除され、2速を成立させるドグが噛み合います。
減速比は34T/17T=2.000


3速

 

さらにシフトドラムが回転すると、シフトフォークの位置が変化します。
L=中、C=中、R=左に移動します。
そして3速を成立させるドグが噛み合います。
減速比は30T/19T=1.578
ここまで来ると、1速と比較してかなり高い車速を得られるようになります。


4速

 

4速ではさらに減速比が小さくなり、
26T/20T=1.300となります。
シフトフォークの位置は、
L=右、C=中、R=中のポジションに変わります。
そして4速のドグが噛み合います。


5速

 

5速では、さらに高速側のギア比、
26T/23T=1.130となります。
シフトフォークはL=中、C=右、R=中のポジションです。
ここでやっとCのシフトフォークがギアを動かします。


6速

 

そして最後が6速です。
シフトドラムが6速の位置まで回転すると、
一番下のL=中、C=左、R=中のポジションになります。
Cのシフトフォークが右から左へ移動し、6速のドグが噛み合います。
これで最高段となる6速が成立します。
減速比は25T/25T=1.000と入力と出力が等速になります。


 

 ◇操作は簡単、動きは複雑

 


普段ライダーが操作しているのは、クラッチレバーを握ってシフトペダルを上下するだけです。
しかし、その一回の操作の裏側では、
シフトドラムが回る

3本のシフトフォークが動く

複数のギアが軸方向へ移動する

ドグが解除・噛み合いする
という複数の機械的な動作が連動しています。


 

 ◇「ただのギアチェンジ」ではなかった

 


今回、ミッションを実際に分解して構造を見てみると、普段何気なく行っているシフト操作が、非常に緻密な機械機構によって成立していることが分かります🧐
特に面白いのがシフトドラムです💡
円筒状の小さな部品に加工された溝によって、3本のシフトフォークの動きを制御し、1速から6速までの変速を機械的に実現しています。
そして最後にドグが噛み合うことで、エンジンの動力が必要なギアを通して後輪へ伝わります。
NSR250Rのカセットミッションは、単に「整備しやすいミッション」というだけではありません。
限られたスペースの中に、一切の無駄のない非常に合理的な機械機構が詰め込まれている核となる部品なのです!
 

さて2回に渡って解説したカセットミッション編はいかがだったでしょうか?
何となくしか分かっていなかったことが、3Dデータを活用し可視化することで、深く理解して頂けたのではないでしょうか?😊
Revivalプロジェクトでは、こうした普段見ることのできない内部構造まで3D化し、NSR250Rの設計や機構を後世に残していきたいと考えています。
 
また、NSRオーナーの皆さんに構造をきちんと理解し、正しく整備してもらうことで良い状態のNSRがより多く残ることを願ってこのブログを書いています🤞
ぜひ引き続き私たちの活動を応援して頂ければ幸いです✨


次回予告
次回はミッションから少し離れて、別のNSR250Rの部品を3Dスキャン・3D CAD化していく予定です。
実物を分解し、測定し、3D化することで初めて分かる、NSRの「設計者の工夫」を引き続き紹介していきます。