先々週の木曜日、実に半年ぶりに彼女とでぇとに行って参りました。今日はそのご報告を、小説風に。
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1
デート当日。
僕ははやる気持ちを抑えきれず、朝早く起き、仕度を済ませ、電車に飛び乗った。しっかりと乗り換え案内を確認したはずだが、15分も早く待ち合わせ場所についてしまった。なんとなくはじめてのデートを思い出して、甘酸っぱいような、くすぐったいような、不思議な感覚が湧き上がってきた。
会ったらまずどうしようと、ぐるぐる考える。「淋しかった」と素直に白状しようか。それとも、なにごとも無かったかのように爽やかに声をかけ、手をひいていこうか。僕は期待と不安でまとまらない想いを抱えながら、目をつむり、俯き、黙々とその時を待ち続けた。
数分後。僕の予想に反し、再会は非常に静かなものだった。僕が思考の奥深いところで、ぐずぐずと歩き回っていると、突然肩を叩かれた。
ゆっくりと、静かに視線をあげる。そこには、少しだけ髪が伸びて、ふくよかになった彼女が、笑顔で佇んでいた。
彼女を目にした瞬間、すぐさま僕の考えていた幼稚なストーリーは何処かに行ってしまった。僕は一言も発さず、いや、発せずと言った方が正しいかもしれないが、ただ彼女の手を取り、抱き寄せた。
(なんと陳腐な展開と表現笑)
2
後になって思い出すと、おそらくほんの数秒の出来事だったはずだ。しかしその時の僕には、静かに抱き合っている時間が、ただただ永く感じられた。
「…暑いよ」
この沈黙を破ったのは、彼女だった。小さく、囁くような声だったが、しっかりと僕の耳に届き、安堵する。僕は、彼女が弱り果て、か細い声で啜り泣き、その場にくずおれてしまうかもしれないとさえ思っていたのだ。とりあえず、そこまで彼女は弱っていなかった。
「ごめん」
と、低く答え、体を引き離す。そこで、改めて彼女を見つめ直す。
彼女は、少し伸びた髪を温泉に浸かるときみたいにお団子にして、可愛らしい黄色いゴムでまとめていた。紫色のふわっとした花柄ワンピースに身を包み、胸元には涼しげなブルーのネックレスをつけている。病気の影響で酷く痩せこけているかもしれないと危惧していたが、全然そんなことはなく、少なくとも外見上は至って健康そうに見えた。むしろ少しだけふくよかになったような気さえする。
目配せをし、無言で彼女を近くのカフェへと促す。
中は節電もなんのそのという感じで、ガンガンにクーラーが効いていた。背中にじっとりとかいていた汗が、少しずつ引いていくのがわかった。
ドリンクとサンドイッチを注文し、奥の席に座った。
何気なく周囲を見渡す。30才ぐらいの男性がスーツに身を包み、ぱちぱちと気怠そうにキーボードを打ち込んでいる。40代の女性二人組が、甘ったるそうなミルクティーを飲みながら、しきりに子供の話をしている。どこにでもある、いやになるくらい静かで穏やかな昼食の風景だ。
でもまだ僕の顔はこわばっていたように思う。何せ、半年間ずっと会いたいと思ってやまなかった彼女が、今まさに目の前に座っているのだ。
とりあえず、ストローの袋をいじってみる。僕は細心の注意をはらって、袋のしわを伸ばす。洗いたてのシャツをアイロンで引き延ばすみたいに、丁寧に、丁寧に伸ばした。
またしても、しばしの沈黙。でもやはり耐え切れず、今度は僕が口を開いた。
「誕生日、おめでとう」
数日前、彼女は誕生日を迎えていた。僕はそのタイミングを見計らい「プレゼントを買ったからぜひ会ってほしい」とお願いしたのである。そこで実現したのが今日のデートだった。カバンから、手のひら大の硬く、小さな箱を取り出し、彼女に差し出す。
「ありがとう。これはネックレス?」
「うん、そう。指輪も、ブレスレットもあげたからね。毎回アクセサリーで申し訳ないけれど。」
「ううん、うれしい。ありがとう。」
やはり僕と同じように硬い表情だった彼女の、頬が緩んだ。半年ぶりにみた彼女の笑顔だった。