今日はいきなりクイズです!

 

カナダのトロントで、自分がたまに飛んでいるルートには「YZEMN」というウェイポイントがあるのですが、このウェイポイント、何と発音するでしょう!?答えは記事の最後で!

ヒントは北米で大人気のスポーツです!

 

 

そもそもウェイポイントとは?

ウェイポイントとは、空にある標識のような物で、飛行機が目的地まで飛行するルートを作成する際に利用されます。

 

 

飛行機の発達と共に、空を飛ぶ飛行機の数が増えると、それまでごちゃごちゃで飛んでいたのを整理する必要が出てきました。そこで出来たのが空の道=航空路です。

 

従来は地上に設置された無線施設、例えばVORやDMEを使って航路を規定していました。VORは飛行機に対して「この施設から何度(真北は360度、東は90度、真南は180度、真西は270度)の方角にいますよ」、そしてDMEは「この施設から何マイルの距離にいますよ」という情報を無線で教えてくれます。

この2つの情報を使うことで、「△△VORから●●度の直線」だったら航空路ができますし、「△△VORから●●度でXXマイルの場所」といったように、ウェイポントを設定できるわけです。飛行機はこのように設定された航空路やウェイポイント、そして地上施設のVORなどを標識として目的地まで航行していました。

 

だた、この方法では飛行の自由度も低く、いちいち地上施設を作るのも大変ですよね。そこで1960年代から進められたのが地上施設に頼らず、どこにでもウェイポイントを設定できて、それを利用して飛べる航法、つまりRNAVです。最初は慣性航法装置を使用し、そこに地上施設からの信号を用いて補正を加えていました。それにより地上施設の位置に関係なく飛行ルートの設定が可能になり、飛行の自由度も高まったのです。今ではそこにGPSも加わり、2D(平面)の航法だけでなく、高度を加えた3Dでの航法が可能になり、アプローチなどに使われています。

 

実際にパイロットの手物に届くフライトプランは、こんな感じになります。こちらは実際の成田からニューヨークへのフライトプランの一部です。

 

GULBO Y808 NOLAX Y812 ADNAP OTR5 KALNA G344 CARTO 5500N/18000E 5900N/17000W . . . 

 

なにかの暗号のようにも見えますが、5つのアルファベットからなるのがウェイポイントで、Y808やOTR5などが航空路となります。つまり、このフライトプランではGULBOからY808に沿ってNOLAXまで飛んで、そこからY812でADNAPへ飛行... という風に目的地まで続きます。

(資料:skyvector.com)

 

太平洋や大西洋上では緯度・経度から作られるルートを飛ぶので、ウェイポイントの代わりに緯度・経度がフライトプランに書かれています。このフライトプランではCARTOの後は北緯55°/東経180°から北緯59°/西経170°... という風に続いていきます。

 

 

ウェイポイントにも種類が!

さて、それではもっと空の地図を見てみましょう!

こちらが福岡県周辺の地図のスクショになります。

 

 

⛭ 空港

△ 従来の航法システム(VOR/DME)によって規定されたウェイポイント。

✧ 広域航法/RNAVを基に規定されたウェイポイント。

 

ウェイポイントはアルファベット5文字で示されています。福岡らしい名前のウェイポイントがありますね!とりあえず4つのウェイポイントをピックして詳しく見ていきます。

 

HARRYとHAWKSは△、という事は地上施設からの情報を基に設定されたウェイポイントという事が分かりますね。下は福岡空港のILS滑走路34のアプローチチャートです。ILSは地上施設の一つで、滑走路の延長線(LOC)と、着地点まで約3度の降下角(GS)を教えてくれる施設のことで、このLOCとGSを辿れば滑走路上の正しい位置にアプローチできるわけです。

HARRYはこのLOC上でDMEから12.1マイルの場所、そしてHAWKSは17.1マイルと書いてあるのが分かるかと思います。

(資料:https://yinlei.org/x-plane10/doc/AIP-J/RJFF_Fukuoka.pdf

 

 

逆にDAZAIとBANKUは✧マーク、つまりRNAVを利用するウェイポイントです。その自由度からよく使われる場面が、巡行からアプローチまでをつなぐルートの役目をするSTAR(Standard Terminal Arrival Route)です。下は福岡の「HAWKS EAST/WEST RWY34」STARで、ここで使われている多くのウェイポイントが✧マークなのが分かります。先ほど出てきた△HAWKSは、ここでは✧マークの中に△が入った記号になっています。

 

(資料:https://yinlei.org/x-plane10/doc/AIP-J/RJFF_Fukuoka.pdf

 

 

どうやってウェイポイントの名前は決められてる??

このウェイポイントの名前。面白い物や地名などが使われているのですが、一体だれが決めているのでしょうか??

正解は各国の航空局の関係者が決めています。

 

国によっても違うかもしれませんが、聞いたところによると、多くのウェイポイントはコンピューターが生成した5つのアルファベットから成るウェイポイント候補を、関係者が発音/聞き取りやすさ、他の単語やウェイポイントと混同しにくいこと、などを判断し採用するようです。

しかし、先ほども出てきた空港へのSTARの名前や、STARに使われるウェイポイントなどは、地域性が高いものを作成することもあります!

 

日本のユニークなウェイポイントを紹介!

いつも通り前置きが長くなったのですが、ここからは、自分が通った飛行ルートの周りで見つけたユニークなウェイポイントを紹介したいと思います!

 

真ん中を通っている青い線が、福岡周辺を実際に飛行したルートです!

 

 

先ほどのHAWKSやBANKUなど、地元の野球チームに関連した名前もありますね。先ほど出てきたHAWKS STARの一部で、もう少し前に戻るとSOFTOもありますね。つなげてSOFTO-BANKU-HAWKS = ソフトバンク・ホークスになってます!野球好きな人が考えたのですかね??笑い泣き

 

北にはKIRIN、EBISU、LAGER(ラガー)やMALTS(モルツ)など、お酒関係の名前がズラリ!実はこの多くがLAGER STARの一部なので、お酒関係でまとめてみたようです!

他のSTARにも、KIRIN-HOPPS(ホップス)-TANRE(淡麗)-MALTSと続くやつもあります!

 

 

次は中国地方。

KRAYO(倉吉)やBIZEN(備前)はそこの地名が基となっているようです。

岡山の北の方にはTONBI(トンビ)とKIJYY(キジ)も見つけました!山岳部にはTOZAN(登山)も。

DANGOなんてのも発見し、「もしかしたらお団子で有名なのかな」などと想像してしまいました!

 

 

次は中国本土から日本への航空路を見てみます。

(資料:https://skyvector.com/

 

ちょっと見にくいですが、赤く囲ってあるウェイポイントは左からLAMEN(ラーメン)-NIRAT(ニラっと)-ONIKU-POTET(ポテト)-AZUKI-GOMAR(ゴマー)となっています。中国大陸から日本へ向かう飛行機はこのルートをよく通るので、パイロットやルートを作成するディスパッチャーの間でも有名な飲食街みたいなルートです!

 

これら航空路に使われているウェイポイントはskyvector.comで簡単に見ることもできるので、皆さんも是非ユニークなウェイポイントを探してみてください!各空港のSTARなどもネット上で簡単に見ることができます!

 

 

さて、先ほどのクイズの答えですが「YZEMN」は........アイザーマンと発音します!これはカナダの有名なホッケー選手、スティーブ・アイザーマン(Steve Yzerman)の苗字からきています。

最初これを見て、「......ィゼマン?」と言ってキャプテンに笑われたのを覚えています笑い泣きいや、これはさすがにハードル高いでしょ(汗