週刊朝日、昭和62年8月7日号から63年5月25日号に連載された作品である。
この年代の週刊朝日には司馬遼太郎の「街道を行く」も連載されていたので、大物作家2人の作品がそこにあって豪華な内容の週刊誌だったのだ。私はこの時、新製品の発売準備で忙しい時だった。当然「黒い空」は読んでいない。
時代はバルムの時代、経営者は事業を拡大する。歴史にも明るい作者戦国時代の合戦の怨念を絡ませた内容だ。
関東管領山之内上杉の子孫山之内さだ子は父の事業を引き継ぎ、拡大し、都心から離れた八王子の山間に豪華な結婚・宴会場「管領会館」をつくり会長として取り仕切る。会長のさだ子の夫、よしおは婿養子で社長だが経営者としての能力はなく、妻の会長からは罵倒されている。経理係の千谷のり子は自ら応募し入社した、仕事の出来る30代の女性。神前結婚式の採主には経理ののり子の紹介で秋川の小さな神社の難波たネとしねぎが専属の神主として、式典を安い謝礼・奉仕料を受け入れ専属の契約しこなしている。
管領会館は繁栄している。
名前ばかりの社長のよしおに、経理ののり子が裏金をつくったことをうちあける。
このことが会長のさだこの知るところとなり、裏金をかくしている部屋ろで、口論となり会長は転倒、意識を失ない、絞殺される。死体はここに隠され、会長の失踪事件となる。
歴史に触れよう。戦国時代の「川越の合戦」は関東管領の山内上杉と小田原の北条氏康の争いである。この戦いで滅ぼされた扇谷上杉の子孫が440年もたった今、恨みを持つ人物が関係してくるのだ。ナゾが深まる。そして事件の解決に殺人現場の鍵がハシブトカラスの巣から見つかることで終わる。題名の「黒い空」は管領会館の上にあつまるカラスのことである。