老健へは午後2時30分ごろから2時間ほど妻の面会に行くことにしている。昼食が終わり、排泄を済ませ一番落ち着いている時間帯である

 

 

用意した紅茶を入れ、乳幼児用の「ソバボウロウ」や、バナナを一口大にし、フォークにさし、おやつをする。

 

 

個室だから、CDをBGとして流しておく。例えば童謡をかける。

 

色々な話をするように心がけている。認知症の進行防止になるようだからだ。

 

 

新聞も見せるようにしている。

ラジオや小説などから興味がありそうな話を取り上げてみる。

 

 

これが中々難しい。彼女の関心のないことには全く乗ってこない。BGで流している童謡を歌いだす。

 

そんなことで私はこの頃童謡をよく聞いていることになる。

 

 

大変勉強になる。心を癒ものが沢山ある。子供のころが思い出される。

 

 

「月の砂漠」の歌詞は幻想的で、ロマンを感じさせる。私はこの歌がどこの砂浜を見て、どんな思いでつくられたかあれこれ考えながら聞くのだが、歌っている妻はどんな気持ちで、例えば王女様になった気持ちで歌っているのか聞いてみるのだ。彼女の答えは男の私の想像をハルカに超えたものだった。

 

 

こんなことを話してくれたのです。「音程をはずさないようにして聞いているのよ」

 

 

若いころ豊中のコーラスのグループに所属し本格的にやってきただけあって、その思いは強くいつまでも残っているのであろう。

 

 

狭い空間にいる二人の老夫婦の童謡への気持ちにこんな違いがあることを知り、興味を引く話題探しに努めようと思ったのです。

 

写真 東京の墨田川河口近くの橋です。ラジオの「今日はなんの日」で昭和14年6月14日がこの橋が完成した日だというので、妻との会話の話題にしたが、彼女は全く反応をしませんでした。要は失敗だったのです。東京生まれには思い出があっても神戸須磨生まれには関係ないのでした。反省。