小松左京(1931-2011)は神戸一中(今の神戸高校)、三高、京大卒である。大阪生まれ、西宮で戦争で神戸の空襲を経験している。

昭和48年の作品ベ、スベストトセーラーのSF小説「日本沈没」を読んでこなかった。恥ずかしながら、この年令になってようやく読むことができた。

地殻変動で、日本各地で噴火が始まり、地震と津波、地割れが起き、日本列島がよじれ、竜の断末魔のような状態で沈んでいく。実にスケールの大きなSF小説だ。日本各地を仕事で回ってきた今の年齢だから、こそよく理解できるように思う。
阪神淡路大震災も東北大震災も経験せずに、実によく地震、津波のもたらす情景と、政治、外交、自衛隊、海上保安庁、研究、マスコミ、救援活などの動きといったあらゆることが描かれ、作者の幅広い能力に関心するばかりだった。

ほんの一端だが書いておこう。

沈没する前に日本アルプスの素晴らしさを見ておこうと、若者のグループが後立山連峰を鹿島槍から白馬まで縦走する。栂池に下るところで、地震と噴火に出会い救助を待つ。たまたま飛んでいた自衛隊のヘリに発見され、骨折した数名だけが乗れるが、10数名は取り残され、不確かな次のヘリを待つことになる。

その間に乗鞍岳の噴火が起こる。白馬大池が決壊、と咳流が発生、噴火による硫黄ガスの臭い、熱い噴石が降ってくる。

こんな光景を伝え、小説はエピローグに入る。

日本がなくなることはどのようなことを意味するのか、作者の想いを7000人の脱出の道をつけて、自らは死をエランだ老人に語らせて終わる。

 

写真 白馬だけを栂池に下る途中から見たものです。

 

 

 

写真 栂池に下るところで白馬大池が見える。