ある時、ネパールの子どもたちに、

皆が住んでいるおウチの

絵を描いて、どんなおウチに

住んでいるのか教えて、と、

課題を出してみた。


すると、誰一人として

絵を描こうとしない。


「自分の家を見たことない?」


と、聞いてみると、


「あるよ〜。毎日見てる」


と、答えてくれたので、


「どんな形で、どんな色?」


と、聞くと、


「えっとね〜、長細くてね〜……」


と、色々答えくれるのだが、

描こうとしない。


どうして描かないのか聞いて

みると、


「だってさ、先生が黒板にお手本描いて

くれないと描けないよ〜、先生描いてよ」


と、子どもたち。


30年前のネパールの一般的な学校では、

子どもの描く絵の被写体は、

被写体実物ではなく、

先生が、絵の本などから

被写体を黒板に描き写し、

それを子どもが描き写すと

いう作業が、絵の授業だったの

である。


先生も学生時代、そんな

絵の描き方しか教わって

いないので、やはりリンゴを

見てリンゴの絵は描けない。


ネパールの子どもたちいわく、

「先生が描いてくれる絵が

正しいんだよ。自分で描いたら

間違えるから、だから先生、描いて」


なのだ。