「亡くなった母さんのだよ」


それは、細やかな彫刻がほどこされた、

義母の形見の指輪だった。

ネパールの金職人が作った手作りのもの

だった。





私達がネパールで結婚式をした時、

義母が亡くなり既に10年以上が過ぎていた。


夫は義母の指輪を義父がまだ持っていた

事に驚いたが、それを私に譲ったことは、

衝撃だったらしい。



「兄さん達の嫁さんには何もあげてなかった

のになぁ。何で君に上げたのかなぁ」


義父が私に義母の指輪を譲っていたことが、

兄嫁たちに知れたらば、私は八つ裂きに

されるだろう。