どうにかこうにか、やっとのことで看護学校を卒業し、晴れて遅咲きの看護師デビューを果たしたが、それは、さらに地獄で地獄にある熱湯釜地獄に頭から沈まされるような毎日の始まりだった。
ピチピチのかわいい同級生に紛れ、若干空気の読めない老けたはっきり物を言う新人ナースが目立っていたのも否めない。
夜勤前は、数日前から一緒に入る先輩ナース一人ひとりに挨拶し、夜食に何を準備するか確認する。
それを忘れた時は、当日勤務で先輩ナース全員から無視される。
検査出しや、術後観察項目などをまとめてメモにし、休憩室鍵なしロッカーにしまっていたら、盗まれて捨てられたり。
思い出してもゾッとする思い出の数々。
ハラスメントという言葉がなかった時代。
唯一、心の支えの夫は遥か遠い異国。
私の精神は限界に近づいていた。